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前編
しおりを挟む「君を誰よりも愛している」
婚約者エーギルはいつだってそう囁いていた、のに。
「ねーぇ、もっと、こっちへ来てぇ」
「積極的だな君は」
「んもぉ照れちゃうわぁそんなこと言われたらぁ……恥ずかしい……でもぉ、貴方だってあたしを欲しているじゃないのぉ」
「ま、そうだな」
「ええだからもっとぉ……激しく力強く……こっちへ来て良いのよぉ?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
その日私は見てしまった。
エーギルが自室に見知らぬ赤毛の女性を連れ込んでいるところを。
どうしよう? 突っ込んでいった方が良いのだろうか。ここはどう動くべきなのだろうか。貴方一体何してるのよ! ――とでも叱ってやる? あるいは反応しない方が良いのだろうか。いや、しかし、見て見ぬふりはできないだろう。それをして今後も彼と付き合っていくということは気分的にできそうにないし。ならやはり乗り込んでいくべき? そしてはっきりと言ってやる方が良いのだろうか?
ぐるぐる考えている間も二人はいちゃいちゃしている。
「その腕を見せてくれよ」
「んもぉ積極的ぃ」
目を覆ってしまいたい。
でもそれはできない。
ここは戦うべきだ。
「いいんだろ? 嫌じゃないんだろ」
「ええ……嫌じゃないわ、貴方が相手なら……うふふ、あたしのすべてを見せてあげるぅ」
「晒すんだ、何もかもを」
「もちろんよ……うふ、うふふ、嬉しいわ……愛してる、愛しているのよ……だから、もっと、深くどこまでも、ぉ……」
徐々に心が固まってきた。
――そして。
「エーギル! こんにちは! 何をしているの?」
私は二人がいちゃつく部屋へ突撃した。
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