婚約破棄を告げられた日、数年かけて育てていた水色の花が咲きました。そしてそれをきっかけに人生は動き出すのです。

四季

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後編

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『貴女はよくこの花を育てましたね』

 夢の中、一人の女性が囁く。

「え……」
『あの花は女神の花』
「そ、そう、ですか……」
『優しき心をもって花を育てた貴女には称賛を。そして、貴女を傷つけた者には罰を』
「え、あの、待ってくださ――」

 そこで目覚める。

 目覚めれば、ああ夢か、と思う。
 でも生々しさもあって。
 貴女を傷つけた者には罰を――その言葉がいやに気になった。

 翌日、私は、オーボデンの死を知った。

 母が教えてくれた。
 彼女がその話を知ったのはオーボデンの母親から連絡があったからだそうだ。

 オーボデンはあの日愛する女性に会いに行こうと家を出たきり数時間帰らず、親や近所の人たちで捜索したところ、亡骸となって発見されたそうだ。その亡骸は川の縁に横たえられていたそうだが、カラスが大量にたかっていたらしい。そして、顔面は、なぜか水色に染まっていたそうだ。

 何があって亡くなってしまったのだろう? とは思うけれど、そこまで気になるということもなかったので、私は「そうなんだー」だけで済ませておいた。

 私と彼はもう他人になっていた。
 婚約者同士でもない。
 だから彼がどうなろうがどうでもいいと理解することにしたのだ。

 その数日後、水色の伝説の花を探しているという男性がわが家へやって来た。

「貴女がこの花を育ててくださったのですか!?」
「はい」
「素晴らしい……!」
「え、あの、ちょっと意味が」
「我が国へ来てください! どうか! 自分、実は、言い伝えにある『花育ての聖女』を探していたのです!!」

 物語は動き出す。
 そう、人生が。
 また新たな道が拓かれてゆく。


 ◆


 あれから数年、私は、生まれ育った国とは離れた地へ引っ越した。
 そして『花育ての聖女』としてその国にて祭られている。
 また、わが家に訪問してきたことから知り合ったあの男性と結婚し、王妃となってもいる。

 オーボデンもことなんて、もう思い出すことも滅多にない。

 今はこの地こそが私の生きる場所。

 過去はすべて過ぎたもの。
 振り返ることはしない。


◆終わり◆
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