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前編
しおりを挟む「俺にはやはりお前を愛することはできない」
婚約者アダムートルがある日突然女を連れて私の前に現れた。
「よって、婚約は破棄とする」
そしてそう宣言する。
「あたしぃ、彼を愛してるのぉ。それにぃ、彼もあたしを愛してるからぁ。だ、か、らぁ……ごめんなさいねぇ? 婚約者さんっ。でも許してちょうだい? 見つけてしまった愛はもう止められないしどうしようもないのよぉ」
アダムートルの隣に腕を絡めて立っている金髪女性は大きめの胸を突き出しつつそんなことを言ってくる。
その表情は少々勝気なもので。
どこか勝ち誇っているような色を帯びている。
「分かってもらえただろうか? つまり、そういうことだ」
「アダムートルさん……あまりにも勝手過ぎませんか……?」
「勝手とは思うよ。けど、見つけてしまった真実の愛の前では、婚約などという形だけの契約など何の力も持たないんだ」
「契約違反なのですよ? 一方的な婚約破棄というのは」
「だとしても! それでも俺は彼女を選ぶ!」
そうか、もう何を言っても無駄なところまで来てしまっているのか。
「俺は愛に生きるんだ」
「そうですか……」
私に選択権はない。
そういうことなのだろう。
「呆れられてもいい! それでも俺は彼女との愛を貫く!」
「……分かりました、きっともう何を言っても無駄なのでしょうね」
「ああそうだ! 俺は愛に生きているからな! この愛はどうやっても抑えられるものではない!」
ならば受け入れよう。
「ではそういうことにしましょう」
その後私は慰謝料だけはしっかりと取ってアダムートルと別れた。
彼はあの女性との愛に生きるのだろう。
ならば私は別の道を行く。
その方が効率的だ、他の女を愛している男にしがみついても何の意味もない。
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