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後編
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「今日も掃除してくれてありがとう」
「あ、いいえ、いいのよ」
あれから色々あったけれど、私は、良き夫を手に入れることができた。
手に入れる、なんて表現は変か。
ただ、私には、アダムートルとの縁を大きく上回る良縁が待っていたのだ。
「でも……大変じゃない? 掃除って」
「そうね。でも気にしないで。これは私の役目だから」
夫はとても良い人だ。
仕事ができる人で、それでいて、家にいる時には家事にも協力的。
こんな良い人を夫にして良いのだろうか、なんて思ってしまうこともあるくらい、彼は素晴らしい人である。
問題点があるとしたら、寝相が凄まじいことくらいか。
でもそんなことはどうでもいいと思える。
なんせ他の部分がとても良いから。
「何か手伝おうか」
「いいのよ座っていて。貴方には家でくらい休んでいてほしいの」
「けど、押し付けるのは……」
「大丈夫よ。でもありがとう。もし頼みたい時があったら言うわね」
「気軽に言ってよ?」
「ええ! ありがとう、そうさせてもらうわね」
ちなみにアダムートルはというと。
あの後あの女性と結婚したそうだが、いざ結婚してみると彼女はまったく家事もせず遊んでいるような状態になってしまい、上手くはいかなかったそうだ。
また、それに苛立ったアダムートルが細かい注意をあれこれ発するがために夫婦仲はみるみる悪化し、愛なんて思い出せもしないほどに憎しみ合う二人となってしまったそうである。
で、そんなある晩、夫婦喧嘩中に女性がビンタを繰り出して、それにカッとなったアダムートルは女性を棒で何度も殴ったらしく――当たりどころが悪かったのか、女性は動かなくなり、そのまま亡くなってしまったらしい。
殺す気はなくとも妻を殺してしまったアダムートル、朝が来る前に人殺しの犯罪者として捕まった。
アダムートルは今、汚い牢屋の中で生きているのだそう。
それが真実の愛だったのだろうか?
あるいはすべてまやかしだったのか?
いずれにせよ、あの二人に明るい未来はなかった。
◆終わり◆
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