身勝手な婚約破棄はまだしも……殺そうとするのはやめてください! あまりにも酷いです!

四季

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後編

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 その後私は実家へ帰り、事のすべてを明かした。

「何ですって!? 婚約破棄のみならず殺されかけた!?」
「なんということだ……」

 両親は非常に驚いていた。

 それはそうだろう。急に殺そうとされた――なんて聞いたら、誰だって驚くだろう。実際当人である私でさえ驚いたのだ、両親だけが驚かない理由はなんてない。

「我が娘にそのような仕打ちを……許せんな」
「ええ、本当に」
「その情報、世に出そう」
「名案よあなた」
「そうだろう?」
「そうしましょう。王子の悪事、少しでも知ってもらわなければ」


 ◆


 婚約破棄から一年半が経った。

 王子エルトリッチは先日ついに国王で実の父親でもある人から勘当を言いわたされ、王家から抜けることとなった。

 その原因を作ったのは我が家である。

 彼の悪事を世に広めた。
 それによって民も国王も事実を知ることとなり王子の行動に関する問題が浮上してきたのである。

 ちなみにエルトリッチは、勘当後間もなく過激な反王家的思想の男たちに捕まってしまい、以降拷問のようなことをされ続ける日々に突入していったようだ。で、彼は今も、拘束され自由など少しも手に入れられぬまま。人としても最低限の権利も保証されない環境で痛めつけられ続けているのだそうだ。

 ま、そのくらいの報いは受けてもらわなくては。

 なんせ罪なき者を殺そうとまでしたのだから。
 そんなことをしておいて自由に幸せに暮らすなんて、許されたことではない。

 一方私はというと。
 今婚約希望が数件届いていて吟味しているところだ。

 希望はある。

 エルトリッチと生きることだけが私の生涯のすべてではない。いや、そんなものは小さなものだ。それゆえ、エルトリッチとの婚約を失ったとて、我が身が滅ぶわけでもないし腕が飛んでいくわけでもない。ただ一つのピースが離れていっただけのことだ。

 きっとこの先良いことだってたくさんあるだろう。その予兆は既に届いているし。だから今はただひたすらに前を向いて自分のペースで歩いてゆくのみ。

 明けない夜はないように、終わらない負の時期もない。

 闇の先にはきっと――これまで見たことのない世界が、光が、確かに存在していることだろう。


◆終わり◆
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