婚約破棄されたので海に来てみたのですが、想定外の展開が私を待っていました。

四季

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後編

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「何かあったのか?」

 もうずっと離れていたのに、まるで昨日までずっと一緒にいたかのような感覚。
 小さい頃からの繋がりは特別だと聞いたことがあるけれど、多分、この感覚こそがそれなのだろう。

「実は……昨日ちょっと色々あって」
「俺でよかったら聞くけど」
「え、いいの?」
「もちろんもちろん!」

 ルククとは心と心で触れ合える気がする。

 気のせいかもしれない。
 勝手な妄想かもしれない。

 けれど、勘というのもまったくもって意味がないものだとは思わない。

「じゃあ言うわ。婚約者がいたの、昨日まで」
「ええっ」
「でも、散々あれこれ言われてしまったうえ婚約破棄されてしまったの」
「何だって……!?」
「ちょっと疲れちゃって。もやもやしてしまったからここへ来たのよ。でも偶然だわ、驚いた、まさか貴方に再会できるなんて」
「そうだったんだ……」

 彼は少し戸惑っているような顔をしている。

「どうかした?」
「あ……い、いや……」
「大丈夫? もしかしてルククにも何か言いたことが? ならお返しに聞くわよ?」
「実は俺……ルーナの後ろ姿を見た時、言いたいことが生まれてきて」
「言いたいこと?」
「ああ、でも、ちょっとびっくりさせてしまうかもしれなくて……」
「いいわよ。何でも言って? ……厳しい批判だけは今ちょっとやめてほしいけど」
「違う、違うよ! 批判じゃない!」
「じゃあ大丈夫」

 彼は少し躊躇うような目をしていたけれど。

「ルーナ、俺と一緒にならない!?」

 彼はやがてそんなこと言った。

 ――そう、これは始まりだった。

 新たな始まり。
 幕開けがここに。


 ◆


 あれから数年、私はルククと結ばれ今も幸せに暮らせている。

 彼との日常は爽やかそのもの。
 まるであの日の海のような。
 そんな日々が私を包み込んでくれている。

 つまり、毎日楽しい!

 ちなみに、かつて私のことをあれこれ悪く言った元婚約者の彼はというと、あの後女遊びのしすぎで自然と破滅していったそうだ。
 築いてきたものは壊れ、社会的に終わり、多くの者から批判され――と、あっという間に追い込まれていったそうだ。

 今の彼の口癖は「ああ、はよ消えたい」だそう。


◆終わり◆
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