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前編
しおりを挟む「泣かないでよ」
私の今の婚約者アドルは優しい。
「な、泣いてないしっ」
「いやいやどう見ても泣いてるよ。……大丈夫? フィネーラ、君が泣いてると僕も悲しいよ」
どんな時も意地を張ってしまう私にでも、彼はそっと寄り添っていてくれる。
「どうして泣いてるの」
「泣いてないってば! 目にごみが入っただけ!」
「そうかなぁ……」
「そうよ!」
「ならいいけど。でも、もし何かあったのなら、いつでも言ってね? 力になるからさ」
私は今も時折泣いてしまう。
それはかつての辛い記憶を夢にみるからである。
さかのぼること数年前、私は、愛していた人に捨てられた――思い入れのあった出会った日記念日に他の女性と口づけしているところをわざと目撃させられたうえ婚約破棄を告げられるという苦い経験。
その彼とはもうとうに別れたのだけれど、でも、それでも今もあの時の後継を夢でみてしまうことがあるのだ。
そして泣いてしまう。
痛みを。
苦しみを。
思い出してしまうのだ。
今のものではない、そう分かってはいても。
それでも辛いことに変わりはない。
「もしかして、前に言っていた夢?」
「……うん」
「やっぱり……!」
「何よ、やっぱり、って……いつまでも過去に縛られている女って馬鹿にしてるの?」
「違う! そんな風に思うわけがないよ、大切な人なのに」
そんな面倒臭い私にでも、アドルは嫌な顔なんて少しもせずに接してくれる。
包み込むような優しさが彼にはある。
アドルは私には勿体ないくらい素敵な人。
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