義妹はいつも話を聞いてくれました。だから誰よりも信じていたのです。なのに、彼女は裏では――

四季

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2話

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「ごめんなさいねぇお義姉さま」
「ちょっと、これは一体どういう……!」
「お義姉さまはアルクさんの幸福を願っていたのでしょう? ならば彼はわたしとくっつくべきです」
「急に何を言い出すの!?」
「アルクさんはお義姉さまには惜しい殿方です」
「うそ……うそ、よね……? きっと何かの冗談……でしょう!? ね? 嘘だと言って!」

 すると義妹はくすりと笑う。

「嘘なわけないじゃないですか」

 黒い笑みだった。

「わたしはアルクさんを手に入れるべく動いていたのですよ、ずっと前から」
「けど、いつも相談に乗ってくれて――」
「話を聞いていて魅力的と思ったから彼を選んだのです」
「そ……そん、な……」

 何も言えなくなってしまう。
 信じていた日々が崩れ去ってゆく。

 どうしてこんなことに……。

 永遠にさよなら。
 アルクからそう言われて。

 私はその場から逃げ出した、足をひたすら動かして。

 こんな、こんなっ……こんなことって……! 信じていたのに。義妹のこと、ずっと。彼女は一番の理解者だと思っていた。誰よりも信じていたし、誰よりも一緒にいたかったし、血の繋がりはなくともこれからも永く共に歩めるのだと思っていた……なのに、こんなことになるなんて! ……私はどうすればいいの? 裏切られて。もう何も信じられない、こんな目に遭わされたらこの世に在るものすべて何もかも信じられなくなってしまう。

 ただ、悲しみの中で夜の闇を歩いていた時、私に運命の出会いが舞い込んでくることとなる。

「危ないですよ!? こんな夜道を女性一人で歩いていたら」

 灯りを持って歩いていた一人の青年に声をかけられて。

 ――それが偉大な良縁だったのであった。
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