1 / 3
1話
しおりを挟む「貴様との婚約、破棄とする!!」
知らない女を傍らに立たせて、婚約者レットカートはそんな風に宣言してきた。
順調だと思っていた。
喧嘩も問題も発生していなかったので。
でもそれは私が勝手にそう思っていただけだったようで。
実際には順調などではなかったみたいだ。
「俺は彼女を心から愛している。こんなことは初めてだ。だが、本当の愛を知ってしまった今、貴様と何となくでやっていくことはもう不可能なのだ。真実の愛を知ってなおどうでもいい女を愛しているていで生きてゆくなど無理、どうやってもできることではない」
レットカートは浮気していた。
「レットカート様……あの、わたし、身を引きます……」
「何を言い出すんだレーディア、俺は君だけを愛している」
「でも……」
「俺と一緒になるのが嫌なのか?」
レーディアと呼ばれた浮気相手の女は慎ましい演技をしている。
そうやってレットカートの心を奪ったのだろう、恐らく。
「いいえ、わたし、貴方を誰よりも愛しています……この世でただ一人、貴方だけを……。でも、もしかしたら、わたしは邪魔な存在なのではと思って……迷惑はかけたくないので……」
「邪魔? そんなわけがないだろうレーディア! 俺はただひたすらに君だけを愛しているんだ、あんな女のことは気にしなくていい。愛がすべてだ! この世は愛だけが支配している!」
見つめ合うレットカートとレーディア。
「ああ、レットカート様……わたし、ただ貴方だけを……想っています」
「そうだそれでいいんだ」
「レットカート様もわたしを……」
「愛している。愛しているさ。誰よりも、この世において最大の愛を君へ向けている」
散々いちゃつきを見せられて。
「おい! 貴様、いつまでそこにいるんだ!」
「え」
「もう言っただろう婚約は破棄だと」
「本気なのですか」
「あったりまえだろうが! ふざけんな! いいからさっさと去れ」
その果てに去ることを選ばされたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる