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何だったんだ、一体……。~よく分からない理由で婚約破棄されました~
しおりを挟むみかんの皮を剥いていたら。
「お前の剥き方、見ててきついわ。生理的に無理だわ。てことで、婚約は破棄な」
信じられないような理由で婚約破棄を告げられた。
え……、どういうこと。ちょっと待って、いや待って、私今何かした? そんな大層なことになるようなこと、した? 私はただみかんの皮を剥いていただけよね、ただそれだけ。それ以上のことなんてしていないし、何か言ったわけでも喧嘩したわけでもないわよね? なのに、婚約破棄? それも急に? みかんの皮の剥き方、それだけで、そこまで……?
困惑で脳内が満たされる。
「どういうことなの……」
「いやだからそのままの意味、みかんの剥き方が無理だから婚約破棄するって話」
結局話はそのまま進展してゆき、私は婚約者に捨てられた。
何だったんだ、一体……。
私の心の内にはもやもやだけが残った。
――その数日後、元婚約者の彼は恋人だという女性の家に宿泊し殺害された。
事件は数日は皆の注目の的となっていたが、すぐに忘れられ、膨大な記憶の海に沈んで。
彼という人間の記憶すらも深く消えていった。
――彼は結局何者にもなれぬままこの世を去ったのであった。
◆
あれから数年、良き夫を得ることができた。
とても気の合う人。
一生を共にしてもいいかも、そう思わせてくれた人。
今は、夫やその両親がもともとやっていたみかん農家の手伝いをしながら、穏やかに日々を生きている。
手伝いは向こうからは一切求められなかった。が、私がみかん農家に興味を持って。それで手伝ってみたいと言ったところ、快く受け入れてもらえ、手伝いとして働かせてもらえることになったのだ。
美味しいみかんと優しい家族、その中で私は生きる。
◆終わり◆
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