魔法が使えたせいで婚約者に妹へ乗り換えられてしまいましたが、やがて、穏やかに暮らせる場所を得ることができました。

四季

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後編

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 ◆


 思えば、あの婚約破棄から二年が経った。

 時の流れとは早いものだ。
 そして忙しかったからなおさら。

「じゃ、冷却しておいてくれ、頼むぞ」
「はい!」
「前言った通り、二段階で冷やすように」
「分かりました!」

 私は今、魔法の研究をしている人のもとで暮らしている。

 厳密には結婚はしていない。
 けれどもうずっと一緒に暮らしている。
 同棲のようなものだろうか。
 法的な結びつきがなくても、私たちは確かにパートナーなのだ。

「あ、そうだ、この前のアレは冷やせてるか?」
「はい。あの戸棚に入れて置いています」
「そうか、分かった」

 ここでなら魔法を使っても嫌われはしない。
 だって彼も魔法使いだから。

 ここで生きている限り、私はもう異端ではない。

「出しますか?」
「いや、いい。自分でやる。熟成はそろそろ良さそうな時期だな?」
「そうですね」
「じゃ、出してくる」
「段をずらさないよう気をつけてくださいねー」

 ここは、私の初めての居場所。

「お! できてそうだな! ロロニア、後で味見してみてくれ」
「味見!」
「嫌か? もしなら考えるが――」
「しますっ!」
「うお」
「味見ならお任せくださいっ」
「おお、やる気だな」
「食べてみたいなーって思っていたんです、実は」
「そうだったのか」

 ちなみにエッヂと妹はというと、あの後、結婚までいくも喧嘩別れすることになってしまったそうだ。

「じゃあ切り分けておく」
「はい」
「そこで食べるか?」
「ええと……でも、手が離せません」
「なら持っていく」
「いいんですか!?」
「どうなっているか情報が欲しいからな、そのためなら何でもしよう」

 顔しか見てもらえないことに苛立った妹が口調を強めることで喧嘩が勃発する、というのが、いつもの流れらしい。

 で、ある時殴り合いになったそうで。

 それから非常に気まずくなってしまい、関係を上手く修復できず、離婚したそうだ。

 妹はそれ以降男性が怖くなり、父親は何とか大丈夫らしいがそれ以外の男性に近づかれると奇声を発するようになってしまったそうだ。で、それゆえ、もう婚約も結婚もできず。今後のことに関して話を進めることがまったくできないという状況に陥ってしまっているらしい。

 そしてエッヂはというと、離婚後しばらく酒を大量に飲むようになり、その結果肝臓の状態が急激に悪くなってしまったそう。で、体調不良や症状に襲われ、今ではかなり大変な状態となっているらしい。


◆終わり◆
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