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前編
しおりを挟む父は、幼い私に、剣術を教えた。
それは、己の身を護るための術。
どんな時も少しは自力で身を護れるように、と、父は話していた。
そんな環境で育った私は、剣術を身につけることはできそこそこ戦えるようにはなったのだが、一方で周囲の男性たちからは少し遠巻きに見られるようになってしまった。
ただ、そんな私にも、一応婚約者はいた。
名はルガシという。
このくらいの年齢だと婚約者がいるのは普通のことなのだ、それは私だって例外ではなかった。
けれど……。
「あんたは俺がいなくても大丈夫だろ」
「え」
「婚約、破棄するわ」
「ええっ」
ルガシもまた、私を良くは思ってくれなかったようで。
「強いんだから一人で生きていけよ」
この日、彼が私に向けた視線は、どこまでも冷たいものだった。
女として見ることはできない。
そう言っているかのような目つきだ。
「そんな! 待ってください!」
さすがに驚いて慌ててしまう。
はいそうですねさようなら、とは言えない。
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