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前編
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よく晴れた昼下がり、婚約者から婚約破棄を告げられた。
理由は『夫の私生活に口出しをする女と夫婦になれる自信はないから』というものだった。
無関係な者がその話を聞いたなら、私がどんなに口出ししているのかと考えるのだろう。ちょっとのことで口煩く喚き散らす女なのだろう、と思われているかもしれない。
ただ、私とて悪魔ではないから、小さなことにいちいち反応しているというわけではないのだ。
私が口出ししたのは、彼が特定の女性とやたらと会っているからである。それも、二人きりで長時間の外出を繰り返しているようだったので、それに関して話をしたのだ。当然、理不尽な言葉を投げかけてはいない。が、彼にとっては、そのことが不快で仕方なかったらしい。
とはいえ、まさか婚約破棄などと言い出すとは。
それはさすがに驚きだ。
「……本気なのですか? 婚約破棄する、だなんて」
「当然だ! もう耐えられん!」
「婚約時の契約書の内容……覚えていらっしゃいます、よね……?」
婚約するとなった時、そういうことに詳しい私の父が契約書のようなものを作った。彼はその契約書をろくに見もせず、書類にサインした。だから彼は知らないのだろう、あの契約書に書かれている内容については。
そうでなくては、こんな気軽に婚約破棄なんて言えるはずがない。
あの契約書には、婚約破棄となった場合のことも書かれていて。その中には、理由にかかわらず彼側が大きな額のお金の支払いを行う必要がある、というものも含まれていたのだ。
理由は『夫の私生活に口出しをする女と夫婦になれる自信はないから』というものだった。
無関係な者がその話を聞いたなら、私がどんなに口出ししているのかと考えるのだろう。ちょっとのことで口煩く喚き散らす女なのだろう、と思われているかもしれない。
ただ、私とて悪魔ではないから、小さなことにいちいち反応しているというわけではないのだ。
私が口出ししたのは、彼が特定の女性とやたらと会っているからである。それも、二人きりで長時間の外出を繰り返しているようだったので、それに関して話をしたのだ。当然、理不尽な言葉を投げかけてはいない。が、彼にとっては、そのことが不快で仕方なかったらしい。
とはいえ、まさか婚約破棄などと言い出すとは。
それはさすがに驚きだ。
「……本気なのですか? 婚約破棄する、だなんて」
「当然だ! もう耐えられん!」
「婚約時の契約書の内容……覚えていらっしゃいます、よね……?」
婚約するとなった時、そういうことに詳しい私の父が契約書のようなものを作った。彼はその契約書をろくに見もせず、書類にサインした。だから彼は知らないのだろう、あの契約書に書かれている内容については。
そうでなくては、こんな気軽に婚約破棄なんて言えるはずがない。
あの契約書には、婚約破棄となった場合のことも書かれていて。その中には、理由にかかわらず彼側が大きな額のお金の支払いを行う必要がある、というものも含まれていたのだ。
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