2 / 4
2話
しおりを挟む
だが婚約者生活もスムーズには進まない。
カルペンの妹リリエンナが非常に厄介な存在だったのだ。
リリエンナは兄であるカルペンのことがとにかく大好き。愛しの兄に婚約者ができたと聞いて、鬼のような顔になって怒っていた。また、彼女はその怒りを隠そうとはせず。遠慮なく私に攻撃を仕掛けてきたのだ。
彼女の私への嫌がらせには凄まじいものがあった。
最初は小さな嫌がらせだった。すれ違いざまに嫌みを言ってきたり、持参物の本に落書きをしたり。子どもがするイタズラ、というような内容が主であった。
しかし段々エスカレートしてくる。
リリエンナは私の事実でない悪口を積極的に口にするようになった。カルペン、両親、それに知人や友人。彼女は、誰に対しても、平然と作り話を口にする。その話を信じた人たちから、私は、冷ややかな視線を向けられるようになってしまった。
また、酷い時には、悪行を押し付けられたりもする。
リリエンナがうっかりカルペンの私物を壊してしまった時などは、私が犯人なことにされてしまった。
「他人の大切なものを壊して否定するなんて最低!」
大事にしていたものが壊れたことにショックを受けたカルペンからは、心ないことを言われた。
「ベリルさん、あなた、うちの息子のお嫁さんになるのにそれじゃあ……駄目よ? しっかりしてちょうだい。他人の大切なものに手を出す女性なんて、お嫁さんとして最悪よ?」
「リリエンナが証言しているのだ、諦めろ。罪は潔く認めてくれ」
カルペンの母親と父親からも失礼なことを言われてしまった。
私は真実を伝えようと努力したのだけれど、分かってもらえるはずもなく。リリエンナの罪はいつの間にか私の罪に変わっていた。悔しかったけれど、黙って叱られるしかなかった。
それからもリリエンナの嫌がらせは続いて……。
さすがに耐えられない、と、心の中の何かが壊れた夜。
私はカルペンの家を飛び出した。
あそこにいたら、何もしていないのに叱られるばかり。悪者にされるばかり。誰も真実を見ようとはしてくれない。たとえ私が説明したとしても、すべて無意味だ。
もういっそ誰もいないところへ行きたい。
誰にも会わないところへ行って、たとえ寂しくても、静かに暮らしたい。
そう考えて、私は森へと駆け出した。
カルペンの妹リリエンナが非常に厄介な存在だったのだ。
リリエンナは兄であるカルペンのことがとにかく大好き。愛しの兄に婚約者ができたと聞いて、鬼のような顔になって怒っていた。また、彼女はその怒りを隠そうとはせず。遠慮なく私に攻撃を仕掛けてきたのだ。
彼女の私への嫌がらせには凄まじいものがあった。
最初は小さな嫌がらせだった。すれ違いざまに嫌みを言ってきたり、持参物の本に落書きをしたり。子どもがするイタズラ、というような内容が主であった。
しかし段々エスカレートしてくる。
リリエンナは私の事実でない悪口を積極的に口にするようになった。カルペン、両親、それに知人や友人。彼女は、誰に対しても、平然と作り話を口にする。その話を信じた人たちから、私は、冷ややかな視線を向けられるようになってしまった。
また、酷い時には、悪行を押し付けられたりもする。
リリエンナがうっかりカルペンの私物を壊してしまった時などは、私が犯人なことにされてしまった。
「他人の大切なものを壊して否定するなんて最低!」
大事にしていたものが壊れたことにショックを受けたカルペンからは、心ないことを言われた。
「ベリルさん、あなた、うちの息子のお嫁さんになるのにそれじゃあ……駄目よ? しっかりしてちょうだい。他人の大切なものに手を出す女性なんて、お嫁さんとして最悪よ?」
「リリエンナが証言しているのだ、諦めろ。罪は潔く認めてくれ」
カルペンの母親と父親からも失礼なことを言われてしまった。
私は真実を伝えようと努力したのだけれど、分かってもらえるはずもなく。リリエンナの罪はいつの間にか私の罪に変わっていた。悔しかったけれど、黙って叱られるしかなかった。
それからもリリエンナの嫌がらせは続いて……。
さすがに耐えられない、と、心の中の何かが壊れた夜。
私はカルペンの家を飛び出した。
あそこにいたら、何もしていないのに叱られるばかり。悪者にされるばかり。誰も真実を見ようとはしてくれない。たとえ私が説明したとしても、すべて無意味だ。
もういっそ誰もいないところへ行きたい。
誰にも会わないところへ行って、たとえ寂しくても、静かに暮らしたい。
そう考えて、私は森へと駆け出した。
1
あなたにおすすめの小説
「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました
黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。
古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。
一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。
追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。
愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
「陛下、子種を要求します!」~陛下に離縁され追放される七日の間にかなえたい、わたしのたったひとつの願い事。その五年後……~
ぽんた
恋愛
「七日の後に離縁の上、実質上追放を言い渡す。そのあとは、おまえは王都から連れだされることになる。人質であるおまえを断罪したがる連中がいるのでな。信用のおける者に生活できるだけの金貨を渡し、託している。七日間だ。おまえの国を攻略し、おまえを人質に差し出した父王と母后を処分したわが軍が戻ってくる。そのあと、おまえは命以外のすべてを失うことになる」
その日、わたしは内密に告げられた。小国から人質として嫁いだ親子ほど年齢の離れた国王である夫に。
わたしは決意した。ぜったいに願いをかなえよう。たったひとつの望みを陛下にかなえてもらおう。
そう。わたしには陛下から授かりたいものがある。
陛下から与えてほしいたったひとつのものがある。
この物語は、その五年後のこと。
※ハッピーエンド確約。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる