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前編
しおりを挟む「お前ってさぁ、ほーんと、無能聖女だよな! ぎゃははは!」
王子で婚約者でもある彼プットツェフ・ド・ビフェストロフは聖女として生きている私をたびたび無能聖女だと罵る。
この身があるからこそ国は平和なのだ。
なのに彼はそのことに気づいていないようで。
彼は純粋に私のことを無能だと思い込んでいるようだ。
そしてある時ついに。
「エーリア、お前との婚約は本日をもって破棄とする!!」
そう宣言されてしまった。
「本気、なのですか?」
「あったりめぇだろが」
「勝手にそんなことを言って、許されると思っているのですか。国のための婚約であり結婚なのですよ? なのにそれを勝手になかったことにするなんて、そんなことは――」
「ぐぎゃはははははは!!」
プットツェフは私を馬鹿にしているように見える。
……ま、いつものことだけれど。
「俺は王子だぞ? この国じゃあ何だって好きに決められるんだよ! ぐはははは!」
彼は愚かだ。
今改めてそう感じた。
偉大な王子は「俺は王子だぞ?」なんて威圧的なことは言わないものだ。
「そうですか、分かりました」
「じゃ、そういうことで、ばいばいエーリア」
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