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前編
「悪いな、俺、お前との婚約は破棄することにした」
その日は春の平凡な日であった。
婚約者エルフィドーンから家の近くに位置する花咲く丘へ呼び出されたと思ったら、そんなことを告げられた。
「婚約破棄……?」
前触れなんてなかった。
そんなことを言われてしまうようなことをした心当たりもない。
どうして? ばかりが脳内を無意味に巡る。
「ああ、そうなんだ」
地面から生えた花たちは今日もこれまでと変わらず美しく風に揺られている。
滅茶苦茶に乱されたこの心とは大違いだ。
「そんな。あまりにも急だわ。そんなことを言われてもすぐには理解が追いつかない……」
「だとしても、婚約破棄の意思は変わらない」
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これもきっとそういうものの一例だろう。
だからきっとここで私が何か言っても無駄なのだろう。
私の言葉なんてもので彼の心を変えることなどできやしない。
「そうよね……貴方はもうそうすると決めているのだから」
「ああそうだ、分かってくれて助かる」
こうして婚約は破棄となったのだが――その帰り道、私は、想定外の事件に巻き込まれることとなる。
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