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前編

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「お姉さまと違って、わたくしはこれまで多数の殿方から愛されてきましたの。ですからそもそも女としての階級が違うんですわ」

 妹の口癖はこれだ。

 彼女はいつだって人気者だった。
 けれどもそのせいで性格がねじ曲がってしまった。

 地味な姉である私を、彼女は常々見下し馬鹿にしている。

 彼女は外面は良い。それゆえ皆からは良き乙女であると思われている。しかし家に一歩入れば傲慢な女へと変貌する。この性格を知ればきっと誰もが離れてゆくだろう、そう思うような性格だ、家での彼女は。

 そんな中、私にも婚約者ができたのだが。

「お姉さまの婚約者、アルフリッド様って、資産家のご子息なのでしょう?」

 妹は我が婚約者に早速目をつけてきた。

「ええ、そうだけれど……」

 既に嫌な予感しかしない。

「貴女みたいな地味な女には勿体ない人間ですわね?」
「ちょっと。何よその言い方」
「実際そうでしょう? 資産家の息子さんなんて、お姉さまには相応しくありませんわ」
「どういう意味?」
「ですから、アルフリッド様はわたくしがいただきますわ!」

 妹は笑顔で平然とそんなことを言い放った。

「いやいやいやそれは滅茶苦茶すぎるでしょう」
「はぁいぃぃ~? 相応しい女が傍にいるべき、わたくしはただ正論を述べているだけですわ」

 それだけ言って、妹は去っていった。

 ――ああこれはまた厄介なことになるやつだな。

 嫌な予感を抱えた私は、備えとして、アルフリッドにこのことを伝えておくことにした。
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