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後編
しおりを挟む「いた……」
思わず声が漏れてしまって。
「エミリーに酷いことを言うからだ。そんな悪女は痛い目に遭っても自業自得だ、お前のような悪女はボロボロになればいい」
さらに心ないことを言われた。
「じゃあな」
ドラコスは冷ややかに一言発して去っていった。
その隣にいるエミリーはぺろと挑発的に舌の先を出しながら私を見ていた。
なんてこと……。
やはりそういうことなのではないか……。
◆
「起きて! 起きてっ」
婚約破棄された日の朝。
「ん……、え……」
「早く!」
「な、なに? 母さん? どうしたの……?」
珍しく起こしにきた母は青い顔をしている。
「ドラコスの家が爆発したのよ!」
彼女は確かにそう言った。
「え――」
すぐには何も言えない。寝起きだからというのもあるし、驚きすぎているからというのもあるし。何にせよ、すぐに反応できる状態ではなかったのだ。
けれどもドラコスの家がなぜか急に爆発したことは事実であった。
ドラコスの両親がたまたま風を浴びるため外へ出て言っていた時に爆発が起こったそうで、それゆえ二人は無事だったようだが、ドラコスの部屋でいちゃついていたドラコスとエミリーは爆発に巻き込まれて逝ってしまったそうだ。
亡骸すら遺らない状態での死となってしまったようだった。
◆
あれから数年、私には新しい婚約者ができた。
エミリーはもういない。
だから婚約者を作っても彼女に奪われることはない。
大丈夫、もう安心して男性を愛せる。
◆終わり◆
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