この国の未来を

四季

文字の大きさ
1 / 2

前編

しおりを挟む
 生まれながらにして私には義務があった。それは、この国と共に生きこの国と共に死ぬこと。それが国王の子として生まれた私の人生であり定め。

 王女としてこの世に生を受けたなら、その定めから逃れることはできない。

 そして、また、細やかな平穏への望みのためにこの国を差し出すことも認められない。

 私は戦いを望みはしない。それが生み出すものの虚しさを知っているから。避けられる戦いであるならばなるべく避けたい。が、それでも、避けることのできない戦いというものもこの世には確かに存在している。

 戦いを拒むことが、国の民を隷属へ導くことであってはならない。
 この国の人々が人々として生きるためには、時に、戦いを受け入れなくてはならない場合もある。その戦いを拒むことは、この国の終焉を意味するのだから。ならば、多少の犠牲が出るとしても、すべてを失う前に交戦せねばならない。

 それでも、もし戦いのない道があるとしたら……。

 それを模索することもまた、王女として生まれた私に与えられた課題なのかもしれない。


 ◆


「……リアさん、サーフェリアさん!」

 はっとして振り返ると、赤に白をほんの少し混ぜたような色をした髪の少女——オッサケが呼びかけてきていた。

 頭の左右、やや高めの位置で結んだ髪は、彼女の可憐さを強調しているかのよう。
 また、こちらを見つめる瞳は髪色とは違う深海のような青。くりくりとした大きめの瞳だが、少しでも視線を合わせると吸い込まれてしまいそうになる。それこそ、人を渦に巻き込んで深海まで引きずり込んでしまいそうな、そんな雰囲気を醸し出している。

「あ、あぁ、ごめんなさい。何だったかしら」
「大丈夫? ぼんやりしてない?」
「えぇ……少し考え事をしていたの。でももう大丈夫よ、気にしないで」

 齢十二、まだ女性的な身体つきにすらなっていない彼女は、一年ほど前に私が運営している『スノーアメジストの気ままな家』へやって来た。双子の片割れであるタバという少女が『スノーアメジストの気ままな家』にいたことが、彼女がここへ来ることとなったきっかけだ。

 ちなみに、『スノーアメジストの気ままな家』というのは、戦争によって親を失った子を引き取って育てている施設。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

異世界からの手紙

F.conoe
ファンタジー
異世界から手紙が届いた。 それは数日前に行方不明になった姉からの手紙であった。 しんみりと家族で手紙をやりとりする話。 でもラストは。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...