婚約破棄されたうえ何者かに誘拐されたのですが、人違いだったようです。しかも、その先では意外な展開が待っていて……!?

四季

文字の大きさ
5 / 13

5話「体調不良は種族共通の災難」

しおりを挟む

 その日、半透明なカーテンつきベッドの上で目を覚ますと、何やら部屋の外が騒々しかった。

「お目覚めですか」
「はい」

 今日の担当メイドは小さな突起のような角が二本生えている種族の若い女の子だ。

「あの……何だか外が騒がしくないですか?」
「そうですね」
「何か事件でもあったのですか?」
「昨夜魔王様が体調不良になられたようで」
「ええっ」

 あんながっしりしていていかつい人でも体調不良になんてなるのか……、と驚いてしまった。

 いや、生き物であれば何者であっても、たまには体調不良にもなるものだろうが――でも彼に関しては勇ましそうな見た目なのでそんなことがあるとは思っていなかったのだ。

「風邪か何かですか?」
「恐らくそうではないかと。ただ、万が一毒を盛られたなどであったら大変なので、念のため調査は行われているようです」
「毒……」

 その発想は私の脳内にはなかった。

 でも、もし、すべてを統べる彼の存在を良く思わない人がいたとしたら――そういうことだってあり得ないことはないかもしれない。

「心配ですね。大丈夫でしょうか」
「ご心配なく」

 彼女はどこか淡々としている。
 若い人なのにそこまで若い感じがしない。

「そうですよね、私、余所者ですし」
「……気になりますか?」
「ごめんなさいでしゃばったことを。ただ、でも、気になることは気になります」
「そうですか」

 少し間を空け、彼女は口を開く。

「様子を見に行ってみますか?」

 意外な言葉が出てきて驚いたけれど。

「……はい!」

 そう答えた。

 私なんかが会いに行っても何の意味もないだろう。
 ほぼ赤の他人なのだから。
 彼だって嬉しくも何ともないだろう。

 でも、気になってしまう。

 その後私は淡白メイドに連れられながらボンボンがいるところにまで行ってみることとなった。


 ◆


「ボンボンさん、体調いかがですか?」

 メイドに連れられ彼のところへ行ってみた。

「ふぬっ!?」

 私が現れたことに驚いてか、彼は変な声をこぼしていた。

 彼は今ベッドに横たわっている。
 容姿そのものに大きな変化はないが、顔周辺がほんのり赤らんでいるようにも見える。
 それに、目つきの鋭さが日頃と少し異なっていて、凛々しさがあまりなくとろんとしている。

「体調不良と聞きまして」
「なぜお主が……」

 ボンボンは戸惑っているようだった。
 先ほどから眼球があちこちいろんな方向を向いている。

 こちらを真っ直ぐ見ることすら辛いのかもしれない。

 だとしたら気の毒だ。
 しんどい思いをすることになるなんて。

「大丈夫かなと思いまして。そうしたらメイドさんが様子を見に行くかどうか聞いてくださって。その流れで来てしまいました」

 出会って間もない、種族も違う、そんな彼にこんな思いを抱くなんておかしなことだろうか?

 いや、そんなことはないはずだ。

 苦しんでいる人を見たら心配する。
 それは普遍的な心の動きだ。

「ふぬ……」

 ベッドの周りでは複数のメイドが忙しく動き回っている。
 騒々しさはこのせいだったのかもしれない。

「ごめんなさい、迷惑でしたよね」
「い、いや……そんなことは……」
「熱がありますか?」
「ああ」
「そうですか、それは大変ですね……何か、力になれることがあれば仰ってくださいね」
「手を煩わせる気はない」
「そうですか……分かりました。話し相手くらいならできますので、もし必要であれば呼んでくださいね」

 帰りしな、ボンボンのところへ戻ろうと歩いているモッツァレに廊下で遭遇。

「アイリーン様! コンニチハ! アレ、ドウシテココニ?」

 ボンボンの体調不良を知って様子を見に来た、その帰り――そう伝えると。

「ゴ心配オカケシテ! 申シ訳アリマセン!」
「そんな。謝らないでください」
「シ、シカシ……連絡ガデキテオラズ」
「いえ、本当に、気になさらないでください」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...