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12話「姫の結末と両国の関係の変化」

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 あの後、メルリナは処刑されたそうだ。

 牢に入れられた彼女は、己の過去の身勝手過ぎる行いを認めながらも謝罪の意思は見せなかったようで。
 いつまでも「あんたたちみたいな野蛮な種族、滅べばいいのよ!!」とか「あたしくはブリッジ王国の姫よ! 魔族なんかの言いなりにはならない! 謝らせようとされたって、絶対に誤らないんだから。誇り高き姫を馬鹿にしないで!」とか言っていたそう。

 で、反省の意思がまったく見られなかったため、処刑されたそうだ。

 そしてハイレンジアとブリッジ王国の関係は急激に悪化する。

 そんなある日。
 ボンボンは悲しそうな顔をしながらやって来た。

「すまぬ、しばらくこちらへは来れそうにない」

 彼は第一声そう言った。

「え……」
「関係の悪化、それは知っているだろう?」
「はい」
「両国が敵対すれば、敵国へ出入りすることは難しい。それはつまり、ここへ来ることも難しくなるということだ。それに、仕事も忙しくなる。……勝手なことを言って悪いが」

 彼はいつになく申し訳なさそうな面持ちでいる。

「いえ、分かります。仕方ない事情ですから」
「戦場にしてしまい申し訳ない」
「いえいえ大丈夫です。それに、分かっていましたよ。いつかはこうなるだろうって」

 姫を処刑なんてすれば、間違いなく関係は悪化するだろう。
 当たり前のことだ。
 たとえ民から尊敬されていない姫だとしても王家の人間であることには変わりないから、殺めれば問題にはなるだろう。

「では我はこれで」

 ボンボンはくるりと進行方向を変え去ってゆく――その背中を目にした瞬間、心が揺れて。

「待ってください!!」

 気づけば私は叫んでいた。

「な……?」
「あ、あのっ」
「何だ」
「も、もし、なんですけど……」

 彼は振り返り首を傾げる。

「もし、そちらの国へ家族で引っ越したいと言ったら……受け入れてもらえないでしょうかっ……?」

 思考より先に口が動く。

 心の奥深くに在るものが勝手に言葉を紡いでいる。

「何を言っておるのだ」
「す、すみません……変、ですよね、あの……これはっ、えっと、たとえばの話で……」

 すると。

「そうするか?」

 ボンボンはさらりとそんな言葉を返してきた。

 思わず、えっ、と――ちっとも可愛くない低い声が出てしまう。

「親御さんがそれでも良いというなら、それでも構わないが」
「え……え……?」
「住む場所なら与えられるが」

 脳が震えるような感覚があって。

「っ……えええええーッ!!」

 叫び、しりもちをついてしまった。

「お、落ち着け落ち着け」
「は……はぃい……」

 数十秒ほどで落ち着けた。

 情けないところを見せてしまった……。

 これは、落ち込みそうだ。

 しかし落ち込んでいる暇はない。
 なぜなら答えを述べなくてはならないから。

「アイリーン、どうする?」
「あの……ちょっと、親に聞いてきても良いですか」
「ああそうだな。一人では決められぬな」
「はい……、では少し聞いてきます」

 この一連の流れを両親に話してみたところ、両親は「それでもいい」と言ってくれた。

 二人が気にしていること、それは、主に身の安全だった。

 この国にいて被害を受けるかもしれないなら、少しでも安全な場所へ移動する方が良い――ちょうどそう考えていた両親は、私の提案をすんなり受け入れてくれて。

「ボンボンさん! 決まりました! そちらへ行かせてください!」
「お、おう……」
「あ。すみません。声、大きかったですよね」
「いや気にするな」

 こうして、家族でハイレンジアへ引っ越すことが決まった。
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