13 / 13
13話「重ね合わされた道」
しおりを挟む
あれから数年が経ち、ハイレンジアはブリッジ王国の国土も取り込む大きな国へと変貌を遂げた。
首都は元々ハイレンジアの首都であった場所だが、今は、両国の民が入り混じりながら暮らす国となっている。
大きな国となったハイレンジア。
そこでは誰もが種族の壁を越え手を取り合い未来へと歩んでいる。
魔族も、人間も、同じ国民として生きているのだ。
そして私もまたそこで暮らしている。
一人の人間として。
そして。
――王であるボンボンの妻として。
「イヤァ、驚キデシタヨ。マサカ、貴女様が我ラガ主と結バレルダナンテ……ソンナコト夢ニモ思イマセンデシタ」
間違って誘拐された時は災難に巻き込まれたなぁと思ったくらいのもので、魔王の妻となる可能性なんてちっとも考えてみていなかった。
けれども結果的にそうなった。
私はボンボンと種族を越えて結ばれたのだ。
「そうですよね。私も同じです。私も、ボンボンさんと夫婦になるなんて……そんなことは想像していなかったですよ。でも、結果的にはとても良かったです」
ただ、幸運だったのは、誰にも反対されなかったことだ。
普通種族が違う者同士の結婚となれば反対意見が出そうなものだが、ボンボンと私の結婚に関しては意外とそういうものは出てこなかった。むしろ周囲が祝い温かく見守ってくれていて。だから話は順調に進んだ。
「ソウ言ッテイタダケルト少々照レマスネ」
「モッツァレさんにも感謝しています、色々お世話になって」
「コレカラモ日々サポートシマスヨ!」
特にモッツァレは色々細かい協力をしてくれた。
だから彼には感謝している。
彼がいてくれたのといてくれなかったのでは物事の進みが大きく異なっていただろう。
ちょうどその時、扉が開いて。
「いるか? アイリーン」
ボンボンがやって来た。
「あ!」
「おお、モッツァレと一緒にいたか」
「ええ」
「今日花が届いたぞ」
「花?」
「お主が好きと言っていた青い花だ」
「あ! アレ!」
青い花、というのは、先日一緒に散歩していた時に庭で咲いているのを目撃した花のことだ。
「そうだったのね」
「見に行こう」
「ええ! 行くわ! ええとじゃあ、モッツァレさん、私はこれで」
一礼し、ボンボンに向かって歩いてゆく。
「イッテラッシャイマセ」
モッツァレは今日も温かく見送ってくれた。
ちなみにブリッジ王家はというと、戦争で滅んだ。
王族の血を引く者は処刑された。
その中にはもちろんオーウェンも入っている。
どんなに威張っていても、王子として生きてきていても、根本から崩れ去る時には無力なものだ。
そういえば。
オーウェンは、処刑が決まった日から実行される日まで、ずっと泣いていたそうだ。
そう聞くと少し可哀想な気もする。死にたくなくて泣いていた、なんて。でも、だからといって、同情しようとは思わない。彼は私の心を護ろうとはしてくれなかった、だから、そんな彼の心が傷ついたとしても彼に心を寄せようとは思わないのだ。
「何を考えている?」
並んで廊下を歩いていると、ボンボンが視線をこちらへ向けてきた。
視線を向けられている。
そう感じるとどことなく圧も感じられて。
けれども嬉しさもある。
胸の内に小さな灯が生まれるような、ほっこりできるような、そんな感覚がある。
「秘密」
どことなくむずがゆいような幸福、こういうものこそそっと抱き締めていたい。
「ぬぬぅっ!?」
「驚き過ぎよ」
「ふぬ!?」
「何も言えていないじゃない……。そうね、でも、花のことは気になっているわ」
特に真面目に。
特に面白く。
そんな風に生きていきたい。
「おお! 気に入っていたものな!」
「ええ」
彼と共に、未来へ。
◆終わり◆
首都は元々ハイレンジアの首都であった場所だが、今は、両国の民が入り混じりながら暮らす国となっている。
大きな国となったハイレンジア。
そこでは誰もが種族の壁を越え手を取り合い未来へと歩んでいる。
魔族も、人間も、同じ国民として生きているのだ。
そして私もまたそこで暮らしている。
一人の人間として。
そして。
――王であるボンボンの妻として。
「イヤァ、驚キデシタヨ。マサカ、貴女様が我ラガ主と結バレルダナンテ……ソンナコト夢ニモ思イマセンデシタ」
間違って誘拐された時は災難に巻き込まれたなぁと思ったくらいのもので、魔王の妻となる可能性なんてちっとも考えてみていなかった。
けれども結果的にそうなった。
私はボンボンと種族を越えて結ばれたのだ。
「そうですよね。私も同じです。私も、ボンボンさんと夫婦になるなんて……そんなことは想像していなかったですよ。でも、結果的にはとても良かったです」
ただ、幸運だったのは、誰にも反対されなかったことだ。
普通種族が違う者同士の結婚となれば反対意見が出そうなものだが、ボンボンと私の結婚に関しては意外とそういうものは出てこなかった。むしろ周囲が祝い温かく見守ってくれていて。だから話は順調に進んだ。
「ソウ言ッテイタダケルト少々照レマスネ」
「モッツァレさんにも感謝しています、色々お世話になって」
「コレカラモ日々サポートシマスヨ!」
特にモッツァレは色々細かい協力をしてくれた。
だから彼には感謝している。
彼がいてくれたのといてくれなかったのでは物事の進みが大きく異なっていただろう。
ちょうどその時、扉が開いて。
「いるか? アイリーン」
ボンボンがやって来た。
「あ!」
「おお、モッツァレと一緒にいたか」
「ええ」
「今日花が届いたぞ」
「花?」
「お主が好きと言っていた青い花だ」
「あ! アレ!」
青い花、というのは、先日一緒に散歩していた時に庭で咲いているのを目撃した花のことだ。
「そうだったのね」
「見に行こう」
「ええ! 行くわ! ええとじゃあ、モッツァレさん、私はこれで」
一礼し、ボンボンに向かって歩いてゆく。
「イッテラッシャイマセ」
モッツァレは今日も温かく見送ってくれた。
ちなみにブリッジ王家はというと、戦争で滅んだ。
王族の血を引く者は処刑された。
その中にはもちろんオーウェンも入っている。
どんなに威張っていても、王子として生きてきていても、根本から崩れ去る時には無力なものだ。
そういえば。
オーウェンは、処刑が決まった日から実行される日まで、ずっと泣いていたそうだ。
そう聞くと少し可哀想な気もする。死にたくなくて泣いていた、なんて。でも、だからといって、同情しようとは思わない。彼は私の心を護ろうとはしてくれなかった、だから、そんな彼の心が傷ついたとしても彼に心を寄せようとは思わないのだ。
「何を考えている?」
並んで廊下を歩いていると、ボンボンが視線をこちらへ向けてきた。
視線を向けられている。
そう感じるとどことなく圧も感じられて。
けれども嬉しさもある。
胸の内に小さな灯が生まれるような、ほっこりできるような、そんな感覚がある。
「秘密」
どことなくむずがゆいような幸福、こういうものこそそっと抱き締めていたい。
「ぬぬぅっ!?」
「驚き過ぎよ」
「ふぬ!?」
「何も言えていないじゃない……。そうね、でも、花のことは気になっているわ」
特に真面目に。
特に面白く。
そんな風に生きていきたい。
「おお! 気に入っていたものな!」
「ええ」
彼と共に、未来へ。
◆終わり◆
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
…脳がイタい王子様が余計な戯言をほざきだしそうですが…。
読んでくださりありがとうございます。
励みになります。