理不尽過ぎる日々から逃れたくて婚約を解消したいと言ったのですが……。

四季

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後編

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 ◆


「あっ、あんた、一体……死んだはずよね? どうして!? どうしてここに、いや、生きているのよ!?」

 レべストの母親は帰ってきた私を見て驚き怯えていた。

「死んだはず……ああ、あたし、呪われて……? それか幻……? や、やめて! 近寄らないで! あんたのことなんてもう過ぎたことよ! ついてこないで! 幻なら消えて!」

 死んだはずの人が目も前に現れた。
 それはきっととても不思議で怖さもある出来事だろう。
 自分が殺した相手ならなおさら。

「来るな、来るなっ……来るなあああああ! ひいいいいい! ひええええええ! 幻なら消えろおおおおおお! 消えろ消えろ消えろおおぉぉぉぉぉぉぉ!! きええええええ!! きひょぅほぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 その日、レべストの母親は、自ら死を選んだ。

 どうやら私がまた現れたことが怖すぎたようだ。

 ただ、それが彼女の選択なのならそれでも構わない――少なくとも、楽しく活き活きして生きられるよりかは不愉快さはない。

 その後レべストにも会いに行く。

「久しぶりね、レべスト」

 もう彼には会わないものと思っていた。
 でもこうしてまた出会えた。

 ……もっとも、もう純粋に笑い合うことはできないのだけれど。

「え……な、何で……お前が……?」
「お義母さんなら亡くなったようよ」
「な、なぜ!?」

 私たちの関係は既に壊れてしまっている。
 だからもう笑い合うことなどできはしない。

 どうやっても、方法はない。

 私だって、できるなら楽しく幸せに彼と一緒にいたかったけれど。

 ……でもそれは無理だった。

「私が現れたことに驚いて、自ら死を選ばれたみたい」
「殺したのか!?」
「いいえ」
「母を殺したのか!! この……クズ女!! 絶対に許さない!!」

 レべストは感情的になり、近くの姿見を割ってその破片を投げて私を仕留めようとした――が、私が片手を伸ばすと破片は跳ね返り、逆に彼の身に突き刺さった。

「な……」
「殺したのは私ではないわ」
「ぐ、ああああああ! いでででで! いでぇ、いでぇ、えええええ、ああああああ!」
「罪なんてなかった私に理不尽にそんな思いをさせたのは貴方の母よ」
「いだいよおおおお!」
「さようなら、レべスト。もう……会うことはないでしょう」

 こうしてレべストとその母親は共に亡くなった。

 帰り道、見上げたそれはとても美しかった。

 今はもう迷いなどない。後悔もない。美しい空を真っ直ぐにみ上げることだって容易い。心は澄んでいる。もうどこへでも行ける、何も悔やみはしない。

 こうして私は幸せに天へ帰ることができた。


◆終わり◆
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