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前編
しおりを挟む絶世の美女と呼ばれながら育ってきた令嬢フィメリアはある日のお茶会にて突然婚約者ムッヅから告げられる。
「お前との婚約、破棄する!」
フィメリアは戸惑った。
なぜならそんなことを告げられるようなことをやらかした心当たりが一切なかったからだ。
婚約破棄となればそれ相応の重大な理由があるはずで、しかし、そのような記憶は何一つとして存在しない――だからこそフィメリアはどうすれば良いものか分からなかったのだ。
「あの……なぜ、ですか? 理由を教えてはいただけないでしょうか」
「お前が美人過ぎるからだよ!!」
思わぬ展開にきょとんとするフィメリア。
もちろん周囲にいた女性たちも驚いたような顔をする。
「お前が美人過ぎるせいで俺はずっと皆からあれこれ言われてきたんだ! つり合ってないとか、どうしてあんな男と、とか!」
「……それは酷いと思いますが、私が言ったわけでは」
「最低女! お前が美人だからってどうして俺が傷つかなくちゃいけないんだよ! ふざけんな! ……だからもう終わりにすることにしたんだ」
こうしてフィメリアは婚約破棄されたのだった。
その後ムッヅは会場から去っていったのだが、その一件によってその日のお茶会は何とも言えぬ空気になってしまって。
「ムッヅくん言ってること滅茶苦茶ね……」
「フィメリアさんが可哀想だわ」
ほとんどの人がフィメリアの味方ではあったが、それでもフィメリアは気まずさを感じずにはいられなかった。
自分のせいで雰囲気が何とも言えない感じになってしまった――悪いことをしてはおらずとも、誰も責めておらずとも、申し訳なさというのは自然と感じてしまうものだ。
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