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1話「婚約者の母親」

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「貴女って……女性としてみっともないわよね」

 その日、私は、婚約者の母親に呼び出された。

 婚約者である彼リークの母親。

 彼女は前々から私を良く思っていないようであった。

 これまでにも絡まれたことはある。
 いちゃもんのようなことを言われたり。

 でもここしばらくは特に動きがなかったので少しは心が変わってきたものかと思っていたのだが、どうやらそうではないみたいだ。

 リーク自体は問題のない男性なのだが……この母親がいるために非常に厄介だ。

「貴女はわたしの息子に相応しくない。よって、婚約は破棄とするわ」

 彼ではなく彼の母親からそんなことを告げられるとは思わなかった……。

 でも、告げられてしまったことは事実で。
 その事実は変わらないものだし、私にどうにかできるものでもない。

「その件は、リークさんもご存知なのですか?」
「ええそうよ」
「……本当に、ですか?」

 念のためもう一度確認すると。

「貴女ね! わたしを疑うなんて! 頭がどうにかなっているんじゃないの!? いい加減にしなさいよ、そんなだから婚約破棄されるのよ!?」

 リークの母親は急に大声を発し始めた。

 怒っている。
 とにかく怒っている。

 だが不自然だ。

 言っていることが本当に本当なのならば、怒る必要なんてないだろうに。
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