2 / 3
2話
しおりを挟む「随分仲良さげじゃないですか。婚約者のいる身で大胆ですね? 今からお泊りですか」
「ご、誤解だ!」
何が誤解なんだか。
先ほどの会話を聞いていれば誰だってすべてを理解するだろう。
今さらごまかそうとしてももう遅い。
「それに、先週もお泊りされたのですか?」
「何を言い出すんだアイル」
「さっき仰っていましたよね、聞きましたよ」
「違う、違うんだ、それは聞き間違いで」
「よい御身分ですね。婚約者がいながら他の女と毎週お泊りだなんて。実に楽しい日々でしょうね」
私はドロバーズのことを勘違いしていたのかもしれない。
まともな人と思っていた。
でも違った。
彼は現状をわきまえることすらできない愚かな人だった。
「でも、私はもう必要ないですね?」
「え、えっ、いや、ちが、違うんだそうでなくっ……」
「そちらの女性と仲良くなさってくださいね」
「待ってくれ! 聞いてくれ!」
「何です?」
「こ、これは、その……すまない、が、遊びなんだ! 単なる遊び! 魔が差したというだけなんだ!」
女性はドロバーズを信じられないというような目で見つめている。
それはそうだろう。
急に遊びなんて言い出すなんて女性に対して失礼過ぎる。
そんなことを言ったら嫌われますよ? という感じだ。
「ドロバーズ……何を言っているのぉ、どういう……」
「今は黙っていてくれ」
「ちょっと待ってちょうだい、そんな、あまりにもぉ……もしかしてあたしのこと本当に……遊びとしてしか見ていなかったのぉ……?」
「うるさい、いいから黙ってくれ」
「そ、そんなぁ……酷い、酷すぎるぅ……」
彼は女性側につく気はないようだけれど。
「ドロバーズさん、婚約は破棄します」
だからといってすべてを許すことはできない。
「ま、待ってくれ! ごめん! 謝る、謝るから!」
「もうお話することはありません」
「どうしてなんだアイル!」
「不愉快だからです、もうお話したくありません」
「頼む話を聞いて――」
「毎週他の女性と外泊するような方との会話など無駄です」
こうして私は彼の前から去った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる