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3話
しおりを挟む彼とはもう話したくない。
いや、それどころか、もう目を合わせたくもない。
彼とはもうおさらばしたい。
そんな感情だけが胸を満たしているから、私はもう、何を言われようとも振り向かなかった。
その後私は正式に手続きを開始。
父の知人にそういうことに詳しい人がいたこともあって、協力してもらいつつではあるが順調に手続きを進めることができた。
そして慰謝料も取れた。
少しだけれどドロバーズから償いのお金をもぎ取ることに成功したのだった。
慰謝料を貰ったからといって悔しさ怒りが完全に消失することはない。
が、ないよりはましだ。
何かを貰えた、その事実が少しは心を癒してくれる。
◆
あれから数年が経った。
とにかくあっという間だったけれど、私は今幸せに暮らせている。
伯父の紹介で出会った男性と結ばれた。
紹介なんてそれほど期待してはいなかったのだけれど、一度町の喫茶店で会ってみた。すると案外気が合って楽しくて。そうして数回会ってみているうちに気がつけば仲良くなっていた。特別な二人となっていたのだ。
彼は温厚な人、それゆえいつも楽しい時間を過ごさせてくれる。
そしてそれは結婚してからも変わらない。
彼はどこまでも彼。
もちろん良い意味で。
あれは仮面をつけていたわけではなかったのだ。
だからこそ結婚生活も順調だ。
毎日とても楽しい。
そういえば。
ドロバーズはあの後私のみならずあの女性からも捨てられたそうだ。
遊びだとか言ったことが原因だとか。
まぁそうだろう、嫌われても仕方ない。急に遊びなんて言い出すなど、明らかにおかしいし失礼である。散々いちゃついておいてそれだから、信用なんてなくなって然り。捨てられるというのも想像できる範囲だ。
で、彼は今、孤独の中で生きているらしい。
評判が悪くなり過ぎているため誰からも相手にされないようだ。
だが自業自得。
すべては彼の行動が招いたこと。
精々苦しめばいい。
そう思う。
良いことではないかもしれない。人の苦しみを望むなど。だが人の心というものは常に善ばかりであれるものでもない。
◆終わり◆
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