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前編

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「どっせいほいほい! どっせいせい! とりゃぁ! どっせいほいほい! どっせいせい! とりゃぁ! おりゃおりゃおりゃりゃお、おっほいほい! ほいっ、とりゃ、どっせいほい! とれ! どっせいほいほい! どっせいせい! とりゃありゃ!」

 この村に伝わる踊り。
 これは人々に幸福をもたらせる舞いだそうだ。

 この舞を踊れば、悪いことをしていない人間は皆、いつまでも幸せであれるらしい――そんな伝承がこの村には流れている。

 私は今代の踊り手だ。

「どっせいほいほい! どっせいせい! とりゃぁ! せいっ、ほいっせい、せいとりゃよこらせ、せいっほいっせい、せいとらせいらせ、ほいほいほい! はいとらほい! はいとら! ほおいん! とりゃせりりゃ! っ、ほい!」

 しかし婚約者リーズナは私が踊り手であることを不満に思っていた。

 というのも、彼の親は「踊り手なんて出の怪しい者がやること」という思想の持ち主だったのだ。

 だからリーズナもまた私を良く思ってくれてはいなかった。

 そして、ある日、ついに――。

「踊り手と結婚なんて無理だ! 婚約は破棄する!」

 そんな風にして関係の解消を告げられてしまった。
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