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前編
しおりを挟むある冬の日、実家で毛布にくるまってぬくぬくしていたところ、一通の手紙が届いた。
それは婚約者アダムスからのもので。
そこにはこう書かれていた。
『君に魅力をそれほど感じなくなったのでもう終わりにしようと思う。婚約は破棄とする。それだけ伝えるために手紙を送りました』
文字からさえも冷ややかさが感じられて。
ああ本当にこの人は私への興味を失ったのだな、と思わせるような手紙だった。
もちろん封筒便箋の流通している中で一番シンプルなデザインのもの。
そこには思いやりや優しさや遊び心など少しもない。
その後、手紙の内容が事実なのかだけ念のため確認し、事実だったためそのまま婚約は破棄となった。
アダムスは最後まで冷たかった。
まるで心のない人形になってしまったかのようだった。
そんな彼も昔は優しかったのだ。いつも私のことを気にかけてくれていたし、私が風邪を引いた時にはお見舞いに駆けつけてくれたことだってあった。
でも今はもう、その頃の彼はいなくなってしまった。
そうだ、過去は取り戻せない。
どうあがいても。
自分が人間である限り。
遠いあの頃には戻れはしないのだ。
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