2 / 3
中編
しおりを挟む
「アルタイル、最近女性と会っているらしいわね」
「嫉妬かい?」
「会っているという噂は事実なのね」
「うんそうだよ。だから何? 君みたいな女性じゃ満足できないもの、仕方ないんだよ」
アルタイルは別の女性と関わりを持っていることを隠そうともしない。いや、隠すどころか、事実を明かしたうえでさらに嫌みをぶち込んでくる。迷わない、躊躇わない、度胸だけは凄いと思う。
「そもそも、僕、君みたいな地味な女性は嫌いなんだよね。もっと華がある人がいいんだ。まぁ事情が事情だから仕方なく受け入れているけど、本当だったら君みたいな女性と婚約なんて絶対しないんだよね」
……よくそんなことが言えるわね。
苛立ちが胸の内を満たす。けれどもそれを露わにはしない。ここで感情的になっても何の意味もないから。冷静に、冷静に、録音を続けるのだ。非道な発言の数々を録音できれば、私は剣を得たようなもの。今はただ、そのために落ち着いて対応する。
「何なら今からでも婚約破棄したいくらいだよ」
私が大人しいからと彼は油断しているのだろう。油断しているから、こんなにも酷いことを平然と言えるのだろう。
だが今はそれでいい。
彼は私を傷つけているつもりかもしれないが、私に剣を与えているだけのことだ。
◆
その後、私は、録音内容を提示して婚約破棄を申し出た。
傷つけるようなことを繰り返し口にしてきたうえ、他の女性とは仲良くしていた彼に、まともな逃げ場があるわけがない。
ただ、それでも最初は、彼は懸命に否定していた。傷つけるようなことは言っていない、他の女性に手を出すようなことはしていない、と、偽りの主張を繰り返していた。録音した音声に関しても、自分の声ではない、と言い続けていた。
けれどもそれで無問題になるほど世界は優しくない。
婚約破棄は成立した。
「嫉妬かい?」
「会っているという噂は事実なのね」
「うんそうだよ。だから何? 君みたいな女性じゃ満足できないもの、仕方ないんだよ」
アルタイルは別の女性と関わりを持っていることを隠そうともしない。いや、隠すどころか、事実を明かしたうえでさらに嫌みをぶち込んでくる。迷わない、躊躇わない、度胸だけは凄いと思う。
「そもそも、僕、君みたいな地味な女性は嫌いなんだよね。もっと華がある人がいいんだ。まぁ事情が事情だから仕方なく受け入れているけど、本当だったら君みたいな女性と婚約なんて絶対しないんだよね」
……よくそんなことが言えるわね。
苛立ちが胸の内を満たす。けれどもそれを露わにはしない。ここで感情的になっても何の意味もないから。冷静に、冷静に、録音を続けるのだ。非道な発言の数々を録音できれば、私は剣を得たようなもの。今はただ、そのために落ち着いて対応する。
「何なら今からでも婚約破棄したいくらいだよ」
私が大人しいからと彼は油断しているのだろう。油断しているから、こんなにも酷いことを平然と言えるのだろう。
だが今はそれでいい。
彼は私を傷つけているつもりかもしれないが、私に剣を与えているだけのことだ。
◆
その後、私は、録音内容を提示して婚約破棄を申し出た。
傷つけるようなことを繰り返し口にしてきたうえ、他の女性とは仲良くしていた彼に、まともな逃げ場があるわけがない。
ただ、それでも最初は、彼は懸命に否定していた。傷つけるようなことは言っていない、他の女性に手を出すようなことはしていない、と、偽りの主張を繰り返していた。録音した音声に関しても、自分の声ではない、と言い続けていた。
けれどもそれで無問題になるほど世界は優しくない。
婚約破棄は成立した。
628
あなたにおすすめの小説
手順を踏んだ愛ならばよろしいと存じます
Ruhuna
恋愛
フェリシアナ・レデスマ侯爵令嬢は10年と言う長い月日を王太子妃教育に注ぎ込んだ
婚約者であり王太子のロレンシオ・カルニセルとの仲は良くも悪くもなかったであろう
政略的な婚約を結んでいた2人の仲に暗雲が立ち込めたのは1人の女性の存在
巷で流行している身分差のある真実の恋の物語
フェリシアナは王太子の愚行があるのでは?と覚悟したがーーーー
好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう
四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。
親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。
しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
安息を求めた婚約破棄
あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。
そして新たな婚約者は私の妹。
衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。
そう全ては計画通り。
これで全てから解放される。
……けれども事はそう上手くいかなくて。
そんな令嬢のとあるお話です。
※なろうでも投稿しております。
貴方の幸せの為ならば
缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。
いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。
後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる