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前編
しおりを挟む将来、王妃となるはずだった――その日までは。
「貴様との婚約は破棄する!!」
婚約者で王子の彼ロザリンオ、彼は婚約者である私より幼馴染みで侍女のリリィラを選んだ。
「貴様がリリィラを虐めていることは知っている」
「何ですかそれ!? 私は虐めていません! 何かの間違いです!」
「いずれにせよ、貴様が悪女であると分かってしまった以上もう貴様とはやっていけない」
「どうして……どうして、悪女だなんて……」
「認めたかどうかより大事なことがある。それは、俺が納得したかどうか。そして、俺が事実と認めたかどうかだ」
なんてこと……。
そんなの、滅茶苦茶ではないか……。
事実が何であるかさえも彼が決めてしまうというのか?
傲慢にもほどがある。
……とはいえ、彼が王子で権力者だ。
ここで逆らえるほどの権力は私にはない、それもまた事実である。
「いいか、貴様は今すぐ消えろ!」
「……はい分かりました」
こうして私は彼の前から去ることとなってしまった。
落ち込みつつ歩いていたら、わざとらしく通りかかったリリィラが近づいてきて「お疲れ様でしたぁっ」と耳打ちしてきた。
ああ、やはりわざとか。
その時のリリィラの表情を見ればそう理解できた。
でもだからといって何か言い返す気にもなれず。
そのまま無視して通過。
今は彼女と話したい気持ちなんて欠片ほどもないから関わらないでおいた。
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