上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む

「お前との婚約は破棄だ! お前とは生きない、消えてくれ!」

 今日、ちょうど一時間ほど前、婚約者レヴォスから関係の解消を宣言された。

 少しは抵抗してみた。粘ってみた。どうにかならないか、と思って。しかし上手くいかず。まったく聞いてもらえず、追い出されてしまった。

 あそこまではっきり追い出されてしまったなら仕方ない。
 そう思い彼の前から去った。

 だって、あれ以上粘ったらもっと嫌われそうだろう?

 彼の中で穢れられるだけ穢れて消えるのは嫌だった。

「……あ」

 刹那、私は深い穴に落ちた。

「うわああああ!」

 足もとをきっちり見ずに歩いていたのが悪い、と思いつつも、どうしようかと考えて心が重くなるのを感じる。

「どうしよう……出られない……」

 何もできそうになくて困り果てていると。

「大丈夫ですか!?」

 上から声が降ってきた。
しおりを挟む

処理中です...