「貴様はやはり野蛮だ。すぐに暴れるし。よって、婚約は破棄とする!」って……あの、急にそんなことを言い出して、一体何なのですか?

四季

文字の大きさ
1 / 2

前編

しおりを挟む
 獣人族の血を引く私アリゾナは。

「貴様はやはり野蛮だ。すぐに暴れるし。よって、婚約は破棄とする!」

 新興領主の家の子息である婚約者ククロよりそんなことを告げられてしまう。

 あまりにも突然の宣言。
 しかもその理由が野蛮だなんて暴れるからだなんて――そんなものは真っ赤な嘘である――それゆえなおさらショックは大きかった。

「野蛮、って……すぐ暴れる、って……それは一体どういうことですか」
「事実だろうが」
「私は暴れていたでしょうか?」
「そう見えるんだよ、お淑やかな女性が好みな俺からすれば」

 心当たりはないのだが、ククロからすれば私は野蛮な女のようだ。

 どういうことかはよく分からないが。

「貴様は獣人の血を引いているだろう」
「はい、それはそうですが……」
「そういうところだよ。そういうところが野蛮さを醸し出しているんだ」

 何それ?
 そんな根本的なところから私という人間を否定するの?

 いやいや、それはおかしいだろう。

 何を今さら。

 私が獣人の血を引いていることなんてずっと前から知っていたではないか。それが嫌なのならどうして私と婚約したのか。血などどうあがいても変わることのないものなのに。それが気に食わないのなら最初から特別な契約など結ばなければ良かったのだ。そうすれば婚約破棄なんてややこしい話も発生しなかった。

 とにかく、後になって文句を言うなどおかしな話だ。

「ま、なんにせよ。アリゾナ、貴様とやっていくのはもう無理なんだ」
「えええ……」
「何だその態度は!」
「いえ、ただ、驚いてしまったのです」
「は?」
「そんなことが理由だなんて、と」
「ああ!? 何が言いたい!? 喧嘩売ってるのか!!」
「そういうことではないですが……」
「じゃあ何なんだよ!」
「血など以前からご存知だったはずです。でも今になってそのようなことを問題視するなんて、少々不自然な話だな、と」

 そこまで言うと、ククロは怒ってしまった。

 そうして私たちの関係は終わりを迎えた。

 もう何もかも手遅れであった。
 ここまで来てしまったら関係修復など不可能だったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす

青の雀
恋愛
公爵令嬢スカーレット・ロッテンマイヤーには、前世の記憶がある。 幼いときに政略で結ばれたジェミニ王国の第1王子ロベルトと20歳の時に結婚した。 スカーレットには、7歳年下の義妹リリアーヌがいるが、なぜかリリアーヌは、ロッテンマイヤー家に来た時から聖女様を名乗っている。 ロッテンマイヤーは、代々異能を輩出している家柄で、元は王族 物語は、前世、夫に殺されたところから始まる。

婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……まさかの事件が起こりまして!? ~人生は大きく変わりました~

四季
恋愛
私ニーナは、婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……ある日のこと、まさかの事件が起こりまして!?

処理中です...