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後編
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ククロに婚約破棄された日から今日で六年になる。
私は今、国営の救助隊に女性として初めて入隊し、日々訓練と救助活動に明け暮れている。
この世界には女性はまだまだ少ない。でもだからこそできることというのもあるのだ。男性にはできないことや難しいことが私にはできる、それゆえ、意外と重宝されている部分もあると思われる。
「アリゾナ! 昨夜はお疲れ!」
「お疲れ様です」
「仕事はどうだった? 進んだか?」
「はい、順調でした」
今、僅かながら獣人の血を引いていたことに、強く感謝している。
この運動神経はその血があってこそ。
私はそれを活かせる場所へたどり着いた。
もしかしたら神の導きだったのかもしれない――なんて、非現実的なことを思うこともあるくらいだ。
「いつも助かってるよ、ありがとな」
「いえ」
「これからも頼むよ!」
「はい、頑張ります」
ちなみにククロはというと、昨年の豪雨災害にて亡くなった。
彼がいる地域に派遣されたのは私を含む部隊だった。しかし彼は救助を拒んだ、相手が私だったから。貴様に助けてもらうほど落ちぶれていない、なんて言っていたククロは、直後川に流されて。そのまま行方不明に、以降彼は発見されていない。そのため、恐らく水に巻き込まれて亡くなったのだろうという話となっている。
後に知ったことだが、私と婚約していた頃のククロにはもう一人大変親しくしている女性がいたそうだ。
もしかしたらそれで婚約破棄を……? なんて思いもするのだが、彼が死んでしまった今真相は闇の中である。
ただ、いずれにせよ、彼との道に光はなかった。
それだけは事実だろう。
ならば輝ける場所で生きられる方が良い。
今のように。
必要とされる場所で生きる、それが一番だろう。
◆終わり◆
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