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1話
しおりを挟む両親も、周囲の大人も、皆揃って妹のことばかりを可愛がっていた。
でも仕方ないと思っていた。
だって妹の方が可愛いことは事実だったから。
私は地味。
妹は華のようで小動物のようで――つまり、美しくて可愛い。
だから私は愛されなくても仕方がないのだと思っていた。
いや、もしかしたら、そう思わなくては正常に生きていけなかったのかもしれない。
すべての理不尽を容姿のせいにして納得し生きることが、愛情不足な私の心を救う唯一の方法だったのだろう。
……恐らく。
◆
「悪いが、君との婚約は破棄とする」
「ヴェルツ様とはわたくしが結婚することになりましたの! お姉さま! うふふ、もちろん祝福してくださいますわよね? 妹の結婚ですものね?」
婚約者ヴェルツ、彼すらも、私を切り捨てて妹を選んだ。
「お姉さま、結婚式の時には泣いて祝ってくださいますわよね? どうかお願いいたしますね? ふふっ」
婚約していても駄目なのか。手に入れていてもなおこんなことになってしまうのか。結局すべて妹に奪われてしまう運命。私が何かを手に入れることはできない。愛しいもの、大切なもの、欲しているもの、そして手に入れていたもの。そのすべては妹に容易く掠め取られてしまうものなのだ。
妹が欲しいと思えば最後なのだ。
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