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5話
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朝、エアハルトは緩めていた上衣の前を締め、それと同時にその日一日に立ち向かう覚悟を決める。
毎日新しい日だ。
昨日までとは異なる出来事が待ち受けている。
だが、それでも、エアハルトはただ前を見据える。
ナスカと結婚することになった日、エアハルトは誓った。もう決して彼女が傷つかなくて済むように、そのために自分は生きるのだと。そして、既に亡き人となっていたナスカの両親の墓前でも、エアハルトは同じように宣言したのだ。いつか死に至る日までナスカを護る、と。
それゆえ、たとえ苦しみを与えられようとも、そこから逃げるという選択はない。
「入れ!」
付き添いの男に投げ飛ばされ、乱雑に部屋へ放り込まれるエアハルト。
腰を打った痛みに息を詰まらせていると、右足のすねを踏みつけられる。
「っ……!」
脂肪の少ないすねを底の厚いブーツで踏みつけられればその衝撃はもろに骨に伝わる。
「大人しくしていろよ」
顔をしかめるエアハルトを見て男はにやにやしていた。
その時、五十代くらいの男性が姿を現した。
今は亡き女大統領カスカベをいまだに盲信しその死の原因を作ったクロレアを憎む、その男。
終戦から時が過ぎ、それでもなお敵国を強く怨むその男は、毎日のようにエアハルトの前へ現れる。そして徹底的にエアハルトの心身を壊そうとするのだ。
「はは、青い顔してんなアードラー。すねを踏まれてそんなに痛かったのか? はは! 情けない男だな、弱ぇ」
男はエアハルトの真正面にしゃがみ込むとわざとらしく顔を接近させてにたりと笑みを滲ませる。
そして、次の瞬間、エアハルトの右すねを勢いよく踏みつけた。
「ぐっ……!」
既に一度踏まれたところを再び踏まれ、骨を折られるかのような気持ち悪さにエアハルトは思わず低い声をこぼす。
「ぉっとぉ~? わりぃなぁ、うっかり踏んじまったぜ」
ふざけてみせる男を睨むエアハルトだが。
「……わざと、だろ」
この状況ではまともな対応をしてもらえるはずもなく。
「はあぁ? わざとなわけないだろ? ばっかじゃねーのかお前! ぎゃはは! おもろー、ぎゃっはははは!」
逆に笑いの対象とされてしまった。
そんなエアハルトは、すねを手で押さえて歯を食い縛り、ただひたすらに痛みに耐えることしかできない。
脂汗が流れ出る。
そんな姿さえも見下し笑う対象とされ、しかしそれでもなお抵抗することは叶わない立場であることは変わらない。
「ま、いいや。お前が苦しんでるとこ見たらすっとするからよ。今日はそーいう路線でいかせてもらうぜ」
「野蛮の極みだ」
「なんだとぉ? ふざけんな!」
男は顔面に多く刻まれたしわをより深めるように怒りの情を露わにし、エアハルトの左脇腹へ真横から蹴りを加える。勢いのある蹴り。エアハルトは右向けに地面に倒れることとなる。身体の下敷きになった右すねは鈍い痛みを放つ。しかしその部位を庇う間もなく次の攻撃が叩き込まれる。それは、先ほど蹴った左脇腹を真上から踏みつけるという攻撃。もろに食らったエアハルトは、ぁ、と小さな声をこぼすことしかできなかった。衣服越しであったとしても蹴られたり踏まれたりすればそこそこダメージは発生するもの。実際今のエアハルトも肉体的な意味ではダメージを受けている。
「分かったか! お前はなぁ! 生意気なこと言ってられる身分じゃねーんだよ!」
「……っ、支配、するのが……随分、好きだな」
「復讐だからなぁ! ま、お前を痛い目に遭わせられればすっとするわ」
「いい年して……趣味の悪い」
「何とでも言ってろ。俺がすべきことは復讐だけだ。偉大なるカスカベ様の命を奪った非道な輩を俺は絶対に許さない」
熱くなってしまった男は乱れた呼吸を整えるため数秒言葉を発することをやめる。だがその間も血走った目で倒れているエアハルトを見下し睨み続けていた。けれどもその程度で怖気づくエアハルトではなくて。苦痛の狭間にあっても、それでもなお、怯えることも慌てることもせずに夜の湖の水面のような静けさを保ち続けていた。眉一つさえ動かしはしない。
やがて息が整うと、男は目尻をつり上げて「偉大なお方を失った苦しみ、お前も少しは味わえ!」と叫ぶ。そしてそれとほぼ同時にまだ横たわるエアハルトの腰を踏み、さらに、足裏を地味に動かしていたぶる。
「まだまだ始まったばかりだ、覚悟しろよ」
男はそう言うと片側の口角だけをぐいと持ち上げた。
「可愛がってやるからな」
熱を帯びた男の声を聞きながら、エアハルトは内心溜め息をつく。
避けられない。
逃れられない。
たとえどんな目に遭わされたとしても。
苦痛に耐えることが比較的得意なエアハルトであっても、痛めつけられることそのものを嬉しく思うわけではない。
ただ、それでもなお、彼には耐え続ける理由がある。
愛する人を、ナスカを、護る。
その意思は固い。
だからこそエアハルトは立ち向かえる。
ナスカが無事ならそれでいい――彼はそう考えていたし、だからこそ折れなかった。
◆
夜、部屋に帰ってきた時、エアハルトは右足を引きずっていた。
「エアハルト!? 足、どうしたの!?」
駆け寄り問いかけるけれど。
「ちょっと怪我しただけ」
彼はやはり本当のことを答えてはくれなかった。
「そうとは思えないわ」
「大丈夫、たいした怪我じゃないから」
エアハルトはそう言うけれど。
そうなんだ、と、すんなりとは受け入れられなかった。
今朝は普通に歩けていたのだ。それなのに右足を引きずるほどに痛めたのだとしたら、それはきっと、ここにいない間に何かがあったのだろう。敵に痛めつけられた可能性だって低くはない。
エアハルトは疲れた様子ですぐに地面に座る。
それから面を上向けて、ふぅ、と一つ息を吐いてから、そっと瞼を閉じた。
「でも、心配だわ。今日のエアハルトは凄く疲れた顔をしてる……」
思わず心をこぼしてしまうと。
「……ごめん、心配させて」
彼は短く返してくる。
「エアハルト、やっぱり、酷いことされてるんじゃ……」
座り込んだままのエアハルトが「気にしなくていいよ」と返してきて、私は思わず「気になるわよ!」とやや鋭く言い放ってしまう。自分でも思っていた以上の鋭い声で、後悔して、数秒経ってから「……ごめんなさい」と付け加えておいた。エアハルトは私を責めることはしなかった。
毎日新しい日だ。
昨日までとは異なる出来事が待ち受けている。
だが、それでも、エアハルトはただ前を見据える。
ナスカと結婚することになった日、エアハルトは誓った。もう決して彼女が傷つかなくて済むように、そのために自分は生きるのだと。そして、既に亡き人となっていたナスカの両親の墓前でも、エアハルトは同じように宣言したのだ。いつか死に至る日までナスカを護る、と。
それゆえ、たとえ苦しみを与えられようとも、そこから逃げるという選択はない。
「入れ!」
付き添いの男に投げ飛ばされ、乱雑に部屋へ放り込まれるエアハルト。
腰を打った痛みに息を詰まらせていると、右足のすねを踏みつけられる。
「っ……!」
脂肪の少ないすねを底の厚いブーツで踏みつけられればその衝撃はもろに骨に伝わる。
「大人しくしていろよ」
顔をしかめるエアハルトを見て男はにやにやしていた。
その時、五十代くらいの男性が姿を現した。
今は亡き女大統領カスカベをいまだに盲信しその死の原因を作ったクロレアを憎む、その男。
終戦から時が過ぎ、それでもなお敵国を強く怨むその男は、毎日のようにエアハルトの前へ現れる。そして徹底的にエアハルトの心身を壊そうとするのだ。
「はは、青い顔してんなアードラー。すねを踏まれてそんなに痛かったのか? はは! 情けない男だな、弱ぇ」
男はエアハルトの真正面にしゃがみ込むとわざとらしく顔を接近させてにたりと笑みを滲ませる。
そして、次の瞬間、エアハルトの右すねを勢いよく踏みつけた。
「ぐっ……!」
既に一度踏まれたところを再び踏まれ、骨を折られるかのような気持ち悪さにエアハルトは思わず低い声をこぼす。
「ぉっとぉ~? わりぃなぁ、うっかり踏んじまったぜ」
ふざけてみせる男を睨むエアハルトだが。
「……わざと、だろ」
この状況ではまともな対応をしてもらえるはずもなく。
「はあぁ? わざとなわけないだろ? ばっかじゃねーのかお前! ぎゃはは! おもろー、ぎゃっはははは!」
逆に笑いの対象とされてしまった。
そんなエアハルトは、すねを手で押さえて歯を食い縛り、ただひたすらに痛みに耐えることしかできない。
脂汗が流れ出る。
そんな姿さえも見下し笑う対象とされ、しかしそれでもなお抵抗することは叶わない立場であることは変わらない。
「ま、いいや。お前が苦しんでるとこ見たらすっとするからよ。今日はそーいう路線でいかせてもらうぜ」
「野蛮の極みだ」
「なんだとぉ? ふざけんな!」
男は顔面に多く刻まれたしわをより深めるように怒りの情を露わにし、エアハルトの左脇腹へ真横から蹴りを加える。勢いのある蹴り。エアハルトは右向けに地面に倒れることとなる。身体の下敷きになった右すねは鈍い痛みを放つ。しかしその部位を庇う間もなく次の攻撃が叩き込まれる。それは、先ほど蹴った左脇腹を真上から踏みつけるという攻撃。もろに食らったエアハルトは、ぁ、と小さな声をこぼすことしかできなかった。衣服越しであったとしても蹴られたり踏まれたりすればそこそこダメージは発生するもの。実際今のエアハルトも肉体的な意味ではダメージを受けている。
「分かったか! お前はなぁ! 生意気なこと言ってられる身分じゃねーんだよ!」
「……っ、支配、するのが……随分、好きだな」
「復讐だからなぁ! ま、お前を痛い目に遭わせられればすっとするわ」
「いい年して……趣味の悪い」
「何とでも言ってろ。俺がすべきことは復讐だけだ。偉大なるカスカベ様の命を奪った非道な輩を俺は絶対に許さない」
熱くなってしまった男は乱れた呼吸を整えるため数秒言葉を発することをやめる。だがその間も血走った目で倒れているエアハルトを見下し睨み続けていた。けれどもその程度で怖気づくエアハルトではなくて。苦痛の狭間にあっても、それでもなお、怯えることも慌てることもせずに夜の湖の水面のような静けさを保ち続けていた。眉一つさえ動かしはしない。
やがて息が整うと、男は目尻をつり上げて「偉大なお方を失った苦しみ、お前も少しは味わえ!」と叫ぶ。そしてそれとほぼ同時にまだ横たわるエアハルトの腰を踏み、さらに、足裏を地味に動かしていたぶる。
「まだまだ始まったばかりだ、覚悟しろよ」
男はそう言うと片側の口角だけをぐいと持ち上げた。
「可愛がってやるからな」
熱を帯びた男の声を聞きながら、エアハルトは内心溜め息をつく。
避けられない。
逃れられない。
たとえどんな目に遭わされたとしても。
苦痛に耐えることが比較的得意なエアハルトであっても、痛めつけられることそのものを嬉しく思うわけではない。
ただ、それでもなお、彼には耐え続ける理由がある。
愛する人を、ナスカを、護る。
その意思は固い。
だからこそエアハルトは立ち向かえる。
ナスカが無事ならそれでいい――彼はそう考えていたし、だからこそ折れなかった。
◆
夜、部屋に帰ってきた時、エアハルトは右足を引きずっていた。
「エアハルト!? 足、どうしたの!?」
駆け寄り問いかけるけれど。
「ちょっと怪我しただけ」
彼はやはり本当のことを答えてはくれなかった。
「そうとは思えないわ」
「大丈夫、たいした怪我じゃないから」
エアハルトはそう言うけれど。
そうなんだ、と、すんなりとは受け入れられなかった。
今朝は普通に歩けていたのだ。それなのに右足を引きずるほどに痛めたのだとしたら、それはきっと、ここにいない間に何かがあったのだろう。敵に痛めつけられた可能性だって低くはない。
エアハルトは疲れた様子ですぐに地面に座る。
それから面を上向けて、ふぅ、と一つ息を吐いてから、そっと瞼を閉じた。
「でも、心配だわ。今日のエアハルトは凄く疲れた顔をしてる……」
思わず心をこぼしてしまうと。
「……ごめん、心配させて」
彼は短く返してくる。
「エアハルト、やっぱり、酷いことされてるんじゃ……」
座り込んだままのエアハルトが「気にしなくていいよ」と返してきて、私は思わず「気になるわよ!」とやや鋭く言い放ってしまう。自分でも思っていた以上の鋭い声で、後悔して、数秒経ってから「……ごめんなさい」と付け加えておいた。エアハルトは私を責めることはしなかった。
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