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後編

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 ◆


 婚約破棄され実家へ戻った私は、母親から「昔近所に住んでいた一家がこの村に帰ってきたらしい」と聞いた。

 なぜだか分からないけれど何か見えない力が動いているように感じて。
 私は母親から聞いた場所へ行ってみることにした。

「あ……!」
「お……!」

 そして出会う。
 かつて仲良くしていた彼に。

「え、ちょ、もしかして!?」
「貴方……クルル? クルルよね?」

 予感は間違ってはいなかった。
 何かが動き。
 曇った箱のなかに置かれていた運命が動き出したのだ。

「あぁそうだよ」
「久しぶり! 元気にしていた!?」

 再会した私とクルルが仲良しになるのに時間はかからなかった。

 私たちの間に心の壁など一切なく。
 瞳を重ねるだけで心は通い合ったのだ。

 その後、私はクルルと結婚した。

 両親も親しかったということもあり、話は実にスムーズに進んだ。

 で、今はもう夫婦。
 ちなみに、既に腹には子がおり、あと一年もせず第一子が生まれる予定である。


 ◆


 あれから三年半、一時期婚約していたボーロイスが亡くなっていたことを知った。

 彼はある時婚約者の女性と山へ行きお出掛けがてらきのこを摘んだそうだ。

 だがかっこつけたいがために「俺、食べられるかは判断できるんだ」などと言い、女性が「一応きちんとしたところで調べてもらおうよ」と言っていたにもかかわらず、判断してもらうことをしなかった。

 その結果、毒のあるきのこをたくさん食べてしまい、彼は幻覚に怯えたまま落命したそうだ。


◆終わり◆
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