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前編

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「私の腹にはオールド様との子がいるのよ! いい? 貴女はもう必要とされていないの。一番愛されているのは私! 分かったわね! じゃ、貴女はとっとと消えて。オールド様の前から消えるのよ!」

 ある日突然知らない女がやって来てそんなことを言ってきた。

 意味が分からない。が、消えろとまで言われてはさすがに無視しておくこともできない。なので婚約者オールドに話を聞いてみることにした。

「ああ、実はさ、彼女が好きすぎてさ。ちょっと仲良くし過ぎたんだよな。で、思ったより早く誕生してしまった。そういうことだよ」

 確認の意味で話してみると、オールドはさらりと子の誕生を認めた。

「子がいるというのは本当なのね?」
「ああそうだよ。愛の結晶さ」
「……婚約者がいる身でよくそんなことが言えるわね」
「何でもいいだろ。ま、言っておくか。お前との婚約は破棄する! これでいいだろ? じゃあな。ばいばい」

 ふざけているのか?

 許すわけがない。
 そんな雑な婚約破棄の仕方。
 誠実さの欠片もない。

 こちらを怒らせようとしているとしか思えない。

「……そうやって精々舐めているといいわ」

 後で痛い目に遭うのはあなたたちよ!
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