筋肉ついてるとか無理、なんて言われ、婚約破棄されたのですが……おかげで良き居場所を見つけることに成功しました!

四季

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前編

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 両親が共にかつて戦士だったこともあって幼い頃から遊び感覚で肉体を鍛えて育った私ロレーゼは、その日、初めてその肉体ゆえに災難に見舞われることとなる。

「お、お前……その身体……」
「何ですか?」

 自室で着替えていたところ、たまたま婚約者の彼オッヂが訪問してきたのだ。
 裸ではない。が、私の素肌に近い姿を目にすることとなった彼。その瞳には絶望に近い不快感の色が滲んで。

「筋肉つき過ぎだろ!!」

 想定外の言葉を放たれてしまった。

「え……」
「うわ、何それ、女なのにそんなとか無理だわ」
「どこかおかしかったですか?」
「いやいやだから女のくせに筋肉ついてるとかやばいって!」

 すぐには言われていることが理解できなかった。
 だって身体を鍛えているだけで嫌われるなんて思いもしなかったから。

 大きな傷を隠していたわけでもないのだし。

「お前もう生理的に無理だわ。てことで、婚約破棄な!」
「えええっ」

 あまりに唐突な展開で思考が追いつかない。
 ただ情けない声が漏れてしまうだけ。

「筋肉女とか無理に決まってるだろ」

 そう述べるオッヂの目つきは冷ややかで。
 彼は本当に私のことを嫌になってしまったようだ――その目つきを見ればそう理解することができた。

 でも、どうしてももやもやする。

 悪いことをしているわけでもないのに婚約破棄だなんて。

「何ですかそれ!? それだけで婚約破棄!?」
「そりゃそうだろ、一度無理になってしまったらもうずっと無理、そういうものなんだ」
「そ、そうですか……」
「だからおしまいにしよう。さよならロレーゼ、お別れだ」

 こうして私はオッヂから婚約破棄を告げられたのだった。

 ――しかし私は折れなかった。

 当たり前だろう、悪いことなんてしていないのだから。

 こちらに非があったのなら少しは申し訳ないと思ったかもしれない。しばらくは小さくなって生きたかもしれない。迷惑をかけた、と。けれども今回に関してはこちらに非はない。あるとすれば身体を鍛えていたことか。でもそれは非ではないはずだ、だって身を鍛えることは罪ではないのだから。あくまで彼の感性の問題でしかないのだ。

 だから堂々としていよう。

 そう思って、前を向いて歩き出す。

 私は私なりの人生を行く。
 幸せを、満足できる日々を、自らの手で掴むために。
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