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前編
しおりを挟む婚約者ルトインはかつて一度浮気をした。
学生時代の友人が連れてきた女と陰でできていたのである。
その時はかなり揉めた、が、彼が大変真剣な面持ちで謝罪してくれたので許した。
そして引き続き婚約者同士としてゆくと決めたのだ。
それが今からさかのぼること三ヶ月ほど前のことである。
だが彼は反省してはいなかった。あの時は本当に反省していたのか、そのあたりは定かでないけれど。何にせよ彼はもう二度とそういうことをしないとまでは考えていなかったようだ。
――結論から言おう、彼はまた浮気した。
今度の相手はルトインが持っている会社で働く女性。
長い時間一緒にいたから自然とそういう関係になっていったのだろう、よくあること。
とはいえ許せなかったので。
「ルトイン、貴方とはもうおしまいよ」
彼と女性が宿泊所に入っていくところを写真に収めてすぐに声をかけて。
「婚約は破棄します!!」
そう宣言した。
あまりにも唐突過ぎるだろう。そう言われても仕方ないと思う。私だってそう思っていた、変だと思ったけれど、それでも考えるより先に身体と口が動いていて。
青ざめる彼を前にして私は関係の終わりを告げていた。
ショックはあった。
でもなぜかその時は冷静で。
「慰謝料は支払ってもらいますから。ではさようなら」
泣き出すこともなく、その場から去れた。
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