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後編
しおりを挟む私が信じてきたものはすべて崩れ去ってしまった。
もう戻らない。
あの頃の幸せは。
そして、かつてのローバルトもまた、今はこの世に存在しないのだ。
人は時と共に変わってしまう……。
「もういいわ。じゃあ去ります。さよなら、ローバルト」
「あーはいはい」
帰り道、たくさん泣いた。
◆
数年後。
「ママ! 今日、この絵本読んで!」
「仕方ないわね、いいわよ」
「昨日は忙しかったでしょ? だから昨日は我慢したんだー。ね? 偉い? 僕偉い?」
私は今、一児の母となっている。
夫はローバルトではない。
冷ややかになってしまった彼と別れた後にたまたま入った雑貨屋にて知り合った青年である。
彼はたぬきのような顔立ち。
しかし聡明な人で、頭の回転も速い。
「はいはい、偉いわ」
「わーい! やったー褒められたー!」
今は、夫のことも息子のことも、大切に思っている。
ローバルトとの縁はあそこで切れたきり。
でももうそんなことはどうでもいい。
それよりも大事なものが今は傍にあるから。
「じゃ、読むわね」
「うん!」
「表紙はいいわよね」
「うん、いらない!」
「それじゃあ本文から」
「わーい! わくわくわくわく」
あ、そうそう。
ローバルトはというと、あの後、親の意向でとある女性と婚約したそうだ。しかし、婚約後も女遊びは一切やめず、注意されてもなお無理矢理遊び続け、結果婚約破棄されたうえその悪しき行いを世に出されたそうで。それによって彼は社会的に終わることとなったそうだ。
ま、彼らしい終わり方か。ある意味。
でも……彼はどうしてあんな風になってしまったのだろう。
今も少し不思議だ。
子どもの頃はそんな女好きではなかったし冷ややかな男でもなかったのに。
彼はどこで道を間違えた?
いつからあんな風な人になってしまったのだろう。
……人生とは分からないものだな。
◆終わり◆
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