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後編
しおりを挟む「聞いた? 聖女が去った途端城が破壊されたんですって」
「ええっ、怖すぎじゃないそんなの。聖女の力っていうのは本物だったのね。彼女がいたから無事だっただけだったってことね……恐ろしいわ」
そんな展開が待っているとは夢にも思わなかった。でも実際そうなってしまったわけで。誰が何を言ったとしても、それが現実なのだということに変わりはない。
彼らはもうあの世へ逝ってしまったのだ。
「そんな重要な人を手放すなんて、王子も馬鹿だわ」
「それな」
「侍女にたぶらかされてたらしいわよ、噂によれば」
「へぇ~。ま、馬鹿だったってことね! よく分かったわ」
それからしばらく街の人たちはそのことについて色々話していたが、やがて時が過ぎて忘れられてゆき、あっとう間に遠い昔の話として人々の記憶の闇に沈みゆくこととなったのだった。
――その後私はというと、少し離れた国から旅行でやって来ていた他国の王子に見初められ彼と結ばれた。
モットレットとのことを知っていて、それでもなお彼は理解し受け入れてくれたのだ。
心の広い彼には大変感謝している。
これからは彼の国を護ってゆく。
目には見えないけれどこの身に宿っている不思議な力を使って。
愛する人の大切にしている国を護りたい、そんな気持ちを抱くのは至って普通なことではないだろうか――たとえその国が私の生まれた国でないとしても。
◆終わり◆
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