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後編
しおりを挟む二人は私には気づいていないようだ。
でもそのままの方が良い。
この状況でもし気づかれてしまったら、間違いなく気まずいし、その時どんな風に対応すれば良いものか分からないから。
「ほんとなのぉ? 約束してたんでしょぉ。だったら来るわよ、きっと。中止って話になったわけじゃないんでしょ?」
「ああ」
「なら普通は来るはずよぉ」
「来ねぇって」
――刹那。
「きゃああ!!」
雷鳴が視界を白く染めた。
響く悲鳴が空気を揺らす。
得体のしれない熱が肌を舐めていった。
――次の瞬間、目の前には気絶したエンベリーグスと女性が倒れていた。
すっかり焼け焦げてしまった二人。
もう少しも動かない。
寄り添い合って、地面に倒れている。
これはもう手遅れだろう。推測だが、今さら何かしても無駄だ。専門的な知識を持っているわけではないけれど、でも、そんな気がする。倒れた二人の姿は、とても生きている人間の姿とは思えない。
この日、エンベリーグスは死亡し、彼との婚約は自動的に破棄となった。
彼の裏での行いを知らなかったとしたらきっと彼の死を悲しんだだろう。でもああいう行為を目にしてしまったから、正直悲しいとは思えなかった。悪いことをしていたからだ、自業自得。今はどうしてもそんな風に思ってしまう。
◆
エンベリーグスらの死から半年後、春、私は一人の男性と出会った。
彼は資産家の子息。
けれども威張ってはいない偉大な心を持った人であった。
二人の家柄には差があって、そのため結婚するには色々な手続きが必要となってしまう――それゆえ結婚まで至るにはまだいくつもの壁がある、が、それでも共にいられる未来を掴もうと協力しあっているところだ。
彼も、彼の親族も、私を受け入れてはくれている。
だから大丈夫。
まだまだ前を向いて進んでゆける。
◆終わり◆
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