婚約破棄を告げられたその雨の日、崖近くで事故に巻き込まれました。~しかしそこから新たな人生が開けていったのです~

四季

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2話「落ちてゆく」

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「ごめん」
「信じられない……!」
「でもどうしても好きな人ができてしまったんだよ」

 あぁそういうことか。

 知りたくなかったけれど知ることができて良かったと思えている部分もある――人間とは単純なようで複雑だ。

「……分かったわ。じゃあ、これでお別れね。……さようならマーブル」

 それだけ言って、彼の家から去った。

 どうしても涙が出てしまう。

 雨の日で良かった、雨に濡れていることにできるから。
 泣きながら歩いているところなんて誰にも見られたくない。

 今は雨粒が涙の色を隠してくれる――それは私にとって大きな救いだった。

 とはいえ悲しみが消えるはずもなく。

 泣きながら山道を歩いている時、ふと崖が目について。引き寄せられるようにそちらへ進んでいってしまう。ただ見に行っただけ、ただ気になっただけ、飛び降りる気はなく――だが。

「えっ……」

 一歩踏み込んだ瞬間、足もとが崩れた。

「あ……」

 崖から落ちる。

 足もとがなくなってしまっては。
 翼のない人間ではどうしようもない。

 ここで死ぬのか。

 ほんの一瞬が永遠のように――これまでの記憶が鮮明に蘇る。

 辛いことや悲しいことはあったが、思い返せば、楽しいことや嬉しいこともあった。

 でもそれらはただの過去の記憶でしかなくて。

(何も……できない……)

 闇に吸い込まれるように落ちてゆく。
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