婚約破棄を告げられて、雨の中泣いていたら。

四季

文字の大きさ
1 / 1

婚約破棄を告げられて、それから。

しおりを挟む
 婚約破棄を告げられて、雨降る中で泣いていた。

 今の空は私の心に似ている。
 上空、遥か彼方、そこに広がる厚い灰色の鏡。
 まるで私の心を映し出しているかのよう。

 躊躇など欠片もなく降り注ぐ雨粒は私の身すべてを濡らしてゆく。

 今は濡れても構わない。

 いや、気にする余裕がないのだ。

 そんな時。

「あのー……ちょっと? 大丈夫ですか?」

 誰かに声をかけられ、振り返る。

 そこには見知らぬ青年の姿。

「取り敢えず雨に濡れないところへ行きませんか、風邪引きますよ」
「わたし、は……放っておいてください」
「駄目ですよ、そんなの。僕が信頼できないなら一緒にでなくても構いませんから、どうか、早く濡れないところへ」

 そう言って、去ろうとする彼。

 その服の裾を掴んだ。

「……え?」
「すみません! あの! 少しだけ、えっと……少し、だけ」

 彼に聞いてほしい。
 訳もなく思った。

「話……聞いて、くれませんか?」

 この痛みを誰に聞いてほしい。

 そこに救いがあるか分からなくても。

「……もちろん。聞きますよ」

 彼はそっと微笑む。

 雨上がりの虹のように。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。

黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。 その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。 王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。 だから、泣かない。縋らない。 私は自分から婚約破棄を願い出る。 選ばれなかった人生を終わらせるために。 そして、私自身の人生を始めるために。 短いお話です。 ※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季
恋愛
それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私ーーリルリナ・グランシェには婚約者がいた。 だが、婚約者に寄ってくる女性がいて……。

婚約者が裏でこっそり姫と付き合っていました!? ~あの時離れておいて良かったと思います、後悔はありません~

四季
恋愛
婚約者が裏でこっそり姫と付き合っていました!? あの時離れておいて良かったと思います、後悔はありません。

いとこがいいと婚約破棄されました。~え? やり直す? 何ですか、今さら。無理ですよ、私にはもう婚約者がいます~

四季
恋愛
私たちは婚約者同士だった。 私は彼を愛していた。

婚約破棄してきた王子、我が父に復讐される。~彼はすべてを失いました……意外な形で~

四季
恋愛
婚約破棄してきた王子、我が父に復讐される。

処理中です...