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後編
しおりを挟む「う、だから……牛な!」
「至近距離」
「り、か……難しい……だが、りんご!」
「ベタね」
「いいだろ! そのくらい! 定番言ってこそのしりとりだろ!」
それに、ローバーのちょっぴり子どもっぽいところも私は好きだ。
ローバーは過去に一度「幼稚で無理」と言われ婚約破棄されたことがあったらしいが、そういうことなら私とは相性は悪くないのかもしれない。
彼を見ているとほっこりできる。
ある意味癒し系と言えるのではないだろうか。
……純粋な人というのは案外見ていて心温まるものだ。
「まぁそうね。じゃあ、ごりらで」
「ベタ!?」
「定番でいいのでしょう?」
「あ、ああ……まぁな……。じゃ、ラインナップ」
ちなみに、私の前の婚約者であった彼は、私と離れて少しした夏に女を連れて外で遊び過ぎたために熱中症になって死亡したらしい。
夏の日差し、夏の暑さ、そういうものを舐めすぎたのだろう。
きちんと対策していれば死にはしなかっただろうに。
……ま、自業自得だし、正直どうでもいいのだけれど。
「プリン味のチョコ」
「小判チョコ!」
「こ、ばかりね……。恋心」
「何だって!? 誰かに恋してるのか!?」
「違う違う、しりとりよ」
「あ、ああ、そうか……良かった……ふぅ」
一方ローバーの元婚約者である女性はというと、王子との結婚をもくろんでいたらしい。それで、嘘の情報を伝えて王子に近づいたそうだが、もう少しで婚約できそうという頃になって嘘を言っていたことがばれてしまったそうだ。で、それによって、虚偽申告の罪に問われて五十年の労働刑に処されることとなったらしい。
嘘は駄目だな。
素直にそう思う。
「次はろよ」
「ろ、ろ、ろ……ろば?」
「バイト」
「年寄!」
「力士、とか」
「しみだらけ!」
「ええ……何とも言えないワードが出たわね……。じゃ、毛虫」
「いやいやいや! 嫌い! 毛虫嫌いっ!」
狼狽えるローバー。
毛虫という単語さえ必死になって拒否する彼はまるで子どものよう。
「落ち着いて、しりとりよ」
「し、し……し……死」
「いや何それ」
私たちのしりとりがこうして穏やかに続いていくように――夫婦の関係もまた、どこまでも、穏やかに継続してゆく。
これを幸せと呼ばずして何と呼ぶのか。
◆終わり◆
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