裏切った婚約者と踏んできたその相手の女性、二人のことを私は絶対に許しません。たとえ善行でなくても、復讐します。

四季

文字の大きさ
2 / 2

後編

しおりを挟む

 ◆


 その日の晩、エッジが一人で住む小さな家へ解放されていた窓から侵入し、台所にあった包丁を手にして寝室へ向かう。

 エッジとエリカは二人並んで狭いベッドで寝ていた。

 眠っている彼へ襲いかかる。

「っ……っ、ああああああああ!?」

 深く眠っていたエッジは刺されて初めて気づいたようだ。
 それまではまったく反応がなかったのに。
 刃物が身に突き立てば目を覚まし甲高く叫んだ。

「な、な、ぁ……痛い! 痛いよ! っ、あああああああ!」

 私の行いは善行ではない。
 けれどそれでも構わないのだ。
 心は決まっている。

 私は化け物、けれどその化け物を生み出したのは他の誰でもないエッジとエリカの二人なのだ。

「ちょ……な、何してんのよあんた!」

 叫びによって目覚めたエリカは高圧的に叫んでくる。
 けれどもその顔は怯えきっている。
 分かりやすい人だ、と、澄み渡る頭で思った。

「エッジに何したの!」
「刺したのよ」
「悪魔! なんてことするのよ! 分かってるの!? 人殺しよ!?」

 窓の外ではまた雨が降り出した。
 雨音が聞こえてきている。

「その悪魔を生み出したのは誰?」
「っ……」
「あなたたち二人、でしょう」
「な、何それ……あんたはただ選ばれなかっただけじゃない!」
「婚約していたのよ、私たちは」
「それが何だって言うの!」
「裏でこそこそやって関係を壊すなんて――最悪な二人ね」

 窓から飛び降りて逃げようとしたエリカは、きちんとまとめられていなかったカーテンに絡まってしまい、カーテンに首を絞められて亡くなった。

 エリカには手を下すことはできなかった。

 けれども彼女は死んだ。
 生命をもって罪を償った、ということなのかもしれない。


 ◆


 あれから数ヶ月が過ぎた。
 エッジとエリカの死の情報は世に出ることはなかった。

 あの光が言っていたことは事実だったようだ。

 で、私はというと、今は孤児院で働いている。

「ぼぉる遊びして!」
「はいはい」
「ええー、ぼくコンドルごっこしよって言ってたのにー」
「じゃあボールを使ってコンドルごっこしましょ?」

 子どもたちとの日々はとても楽しい。
 いや、もちろん、苦労することや大変だと思うこともありはするのだけれど。
 それでも、子どもたちの明るい表情を目にしていたら、こちらまで自然と明るい気持ちになれる気がするのだ。

「わーい!」
「ぼぉるでこんどるごっこって何するの?」

 晴れた空の下、今日も子どもの遊び相手になる。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

黒の聖女、白の聖女に復讐したい

夜桜
恋愛
婚約破棄だ。 その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。 黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。 だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。 だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。 ※イラストは登場人物の『アインス』です

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者の私より彼女のことが好きなのですね? なら、別れて差し上げますよ

四季
恋愛
それなりに資産のある家に生まれた一人娘リーネリア・フリューゲルには婚約者がいる。 その婚約者というのが、母親の友人の息子であるダイス・カイン。 容姿端麗な彼だが、認識が少々甘いところがあって、問題が多く……。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

幼馴染みで婚約者でもある彼が突然女を連れてきまして……!? ~しかし希望を捨てはしません、きっと幸せになるのです~

四季
恋愛
リアは幼馴染みで婚約者でもあるオーツクから婚約破棄を告げられた。 しかしその後まさかの良い出会いがあって……?

処理中です...