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前編
しおりを挟む「お前は俺に相応しくない」
「え……」
婚約者アダマンスの口から出たのはあまりにも唐突な言葉で。
「その自覚はあるか?」
「え、あ……あの、それはどういう……」
「つまり、俺たち二人はつり合っていないということだ」
「そ、そうでしょうか……」
「認めないか?」
「私はその、確かに優秀ではないですけど、でも……その、あまりにいきなり過ぎて理解が」
思考が追いつかない。
何の前触れもなくやって来た嵐の匂いに対応できるほど私は有能でない。
「そういうところだ。そういうところが不愉快なんだ」
「不愉快……!?」
「ああそうだ、不愉快。言葉そのままの意味だよ」
「そう……ですか、申し訳……」
「もういい。何も言うな。で、お前との婚約だが、本日をもって破棄とする」
彼は私に目もくれないままで言った。
そんな大事なことを告げるのに相手を見もしないの?
私ってそこまで価値がない?
「婚約破棄……ですか」
「お前に価値を感じないからな」
「そんな……」
「何なんだぐじぐじ言いやがって! 潔く去れよ」
アダマンスにはもう優しさは残っていないようだ。
「……はい、分かりました。ではこれで、さようなら」
どうあがいても私たちは終わるしかないのか――ならば仕方ない、これ以上怒らせてしまう前に私は消えるとしよう。
そうして私はアダマンスの前から消えた。
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