三つ年上の婚約者、彼の本性を知ってしまいました。~もう彼と歩むことはできません~

四季

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後編

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「な、ななな、何でっすか!? 急に!? あ、もしかして、彼女が俺は嫌だって言い出したとか? あ、絶対、絶対そうっしょ? だからこんなてきとーなこと言って慰謝料なしでの婚約破棄を狙ってるんっしょ?」

 今になってあわあわするリーゲンを見ていたら面白かった。

 ……愛してなんていなかったくせに。

 あんな酷いことを言っておいて、よくそんなことが言えるわ。

 思いやりの欠片もない人。
 控えめに言って大嫌い。

「ちょっとちょっと! 本気で言ってないよな!? な!?」
「本気です」
「へぁっ!?」
「……私にはもう、貴方と生きてゆく気はありません」
「な、何でだよ」
「最低です、あのような言い方。私を馬鹿にして。傷つくのですよ、人は。たとえ冗談だとしても、それでも、私はあんなことを平然と言える人を許せません」

 さようなら。

 私は堂々とそう告げた。

 もう彼への情など少しもない。塵ほどもない。そう、私の中の彼への想い感情はすべてとうに消え去った。あの心ない言葉を聞いた時、私の中にあったそれらは灰になって飛んでいってしまったのだ。


 ◆


 その後私は幸せな結婚に成功した。

 婚約破棄後しばらくは近所のカフェで手伝いをしていた。することがなくて暇だったからだ。だがそれが幸運を引き寄せた。

 店員と客という関係性で、私たちは出会うこととなる。

 巡り会った私たちが惹かれ合うのに時間は必要なかった。

 そうして結婚するに至ったのだった。

 驚かれるだろうか? いや、実際そうだと思う。私だって驚いたのだ。だって不思議な話だろう? 生涯を共にする唯一の人に店の手伝い中に巡り会うなんて。しかも店員と客という関係で出会うなんて、なおさら不思議な話。

 誰よりも早く、誰よりも先に、私自身が驚いたのだ。

 ちなみにリーゲンはというと。
 勤めている会社の機密事項を恋人の女に漏らしてしまいその情報が競合他社に流れてしまったそうで、それによって彼は会社をくびになったそうだ。
 また、それによって信頼も失って。
 彼は命こそ失わずに済んだものの社会的な死という罰を受けることとなってしまったようだ。

 口から災難は生まれる。
 そんな言い伝えもあるけれど。

 どうやらそれもあながち間違いではないようだ。


◆終わり◆
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