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前編
しおりを挟むある日私の家にやって来た派手な女。
すべての指に豪華な指輪をはめている。
「貴女がエミリーね?」
彼女は第一声から高圧的な雰囲気を放っていた。
「は、はい……そうですけど……」
「いいわ! マッスル様の前から今すぐ消えてちょうだい!」
「え。何の話ですか……?」
「マッスル様の前から消えてって言っているのよ!」
「えええ……」
ちなみにマッスルというのは私の婚約者の名である。
「彼はあたしを愛しているの! ご存知でしょう?」
「ごめんなさい知らないです。もしかして浮気相手の方ですか」
「うるさいわね! 愛されているのはあたしなの! 浮気相手、なんて、そんな風に言って偉さを主張しても無駄よ」
――そこへ。
「おい! ガーレンダ何してる!」
マッスルが駆けてきた。
「お前! エミリーの前に出て何をしているんだ!」
「あらマッスル様、いつものお話ですわよ」
「いつもの……って、まさか!!」
青ざめるマッスル。
「婚約を破棄するうんぬんの、か!?」
「ええ」
「何て言ったんだ!」
「ですから、マッスル様の前から消えろと――」
「馬鹿!!」
叫ぶマッスル。
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